日米貿易協定が来年1月1日に発効することが正式に決まった。先日閉幕した臨時国会で承認され、米国も国内手続きを終えたためだ。

 しかし、国会での議論は深まらず、日本にとって不利な合意になっているとの疑念は晴れなかった。

 政府は国民に説明を尽くすとともに、不平等な内容を是正するよう米国に強く求める必要がある。

 協定で最も問題なのは、日本の自動車と関連部品の関税撤廃が盛り込まれなかったことだ。米国が環太平洋連携協定(TPP)から離脱する前に約束し、交渉の際、日本が「譲れない」と重視していたものである。

 一方、日本向けの米国産牛豚肉や小麦、乳製品の一部、ワインにかかる関税は発効後、TPPと同じ水準まで一気に下がる。

 TPPで設定していた米国産コメの無関税枠を設けないことや、エアコン部品、国産牛肉が輸出しやすくなるといった利点はあるものの、安倍晋三首相が強調した「ウィンウィン」には程遠いと言わざるを得ない。

 これでは、米国にTPPのいいとこ取りをされたようなものだ。

 政府は日本車の関税について、撤廃は確約されていると国会審議で説明したが、「さらなる交渉を実施する」との合意文書を挙げたのみで、明確な根拠は示せなかった。

 実現が見通せないにもかかわらず、日本車の関税撤廃を前提に、協定発効に伴う国内総生産(GDP)の押し上げ効果が約0・8%、約4兆円に上ると発表したのも問題だろう。

 野党は、関税撤廃の前提を除いた効果分析を求めたが、政府はかたくなに拒否した。数字を過大に見せかけてまで成果をアピールしようという姿勢は、誠実さに欠けると言えよう。

 さらに見過ごせないのは、協定が世界貿易機関(WTO)のルールに違反する疑いがあることだ。

 WTOは加盟国が協定を結ぶ場合、90%の関税撤廃率を目安として求めている。日本の撤廃率は84%になるが、米国は日本車の関税撤廃を含めて92%、それを除けば60%程度でしかない。

 国際ルールを軽視する米国に加担すれば、日本の信用も損なわれよう。順守させるためにも、日本車の関税撤廃を迫るべきだ。

 これまでの貿易交渉で、トランプ米政権は日本車への追加関税や数量規制に言及し、安全保障も絡めて日本を揺さぶってきた。

 来年始まる第2弾の交渉では、大統領選に向けて成果が欲しいトランプ氏がさらに圧力を強め、一層の市場開放を求めてくる恐れがある。

 だが、日本はこれ以上、譲歩するわけにはいかない。TPPの水準を超えれば、他の参加国からの非難は必至だ。政府は脅しに屈せず、毅然と対応しなければならない。