徳島市の阿波踊りの公式ポスターを長年手掛けてきた同市のコピーライター新居篤志さん(52)と、グラフィックデザイナー藤本孝明さん(57)が、今夏のPRポスターを自主制作した。多額の累積赤字が表面化し、運営を巡って混乱が続く阿波踊りを市民の立場で支えようと、ポスター制作を思い立った。一部で今夏の開催を危ぶむ声もある現状を踏まえ、「響け夏!」のキャッチコピーに開催実現への熱い思いを込めた。
新居さんの知人が昨夏の阿波踊りで撮影した写真を採用。愛知県の連に所属する女性の踊り子を真横から撮影したクローズアップショットで、演舞場に踊り込む直前の緊張感に包まれた表情を捉えた。「いとしの二拍子、響け夏!」のコピーが、白抜き文字で中央に大きく配されている。
B1判とB3判を各500枚作って1セット500円で販売し、印刷費を回収する。
新居さんらによると公式ポスターは例年、2月にはデザインが固まっている。今年は運営を巡る混乱から、主催団体の一つだった市観光協会から依頼がなかった。このため、3月に新居さんが自主制作を発案して藤本さんに協力を求め、藤本さんも応じた。
2人は2011年から7年連続で、公式ポスターを制作。協会から委託料を受け取って制作してきたが、今回は無償でのポスター作りだ。新居さんは「依頼がないから、と黙っているのも違うと思う。阿波踊りは市民の祭りで、仕事を超えた思いがあった」と話す。
今夏の阿波踊りを巡っては、市が市観光協会に代わる主催組織として、新たな実行委員会を立ち上げる予定で、混乱が続いている。
こうした中、自主ポスターには「響け夏!」の文字が生き生きと躍る。新居さんは「通常なら『響く夏』だったと思う。『響け』という文言に、いつも通り阿波踊りがあってほしい、という思いを込めた」と語る。
新居さんがフェイスブックで自主制作を発表したところ、既に多くの反響が寄せられている。ポスターは今月20日ごろから新居さんらが知人を通じて希望者に配り、人目に付く場所に掲示してもらう。近く、市内の商店街で販売会を開く予定だ。