監督官庁が天下り先と癒着して不祥事を起こすとは、言語道断だ。

 かんぽ生命保険の不適切販売問題を巡る行政処分の情報を公表前に外部へ漏らしたとして、総務省の鈴木茂樹事務次官が辞職した。事実上の更迭である。

 漏えい先は日本郵政の鈴木康雄上級副社長だった。鈴木副社長も総務次官経験者とあって、先輩の立場を利用して鈴木次官から複数回にわたり、処分に関する情報を聞いていたという。

 行政の公正さをないがしろにする行為であり、到底許されない。今回の情報漏えい以外にも不正はなかったのか、総務省は徹底的に調べなければならない。

 かんぽ問題は2018年までの5年間で、契約者への虚偽説明や不要な二重契約が疑われる違反が1万3千件近くに及ぶ。契約者は60歳以上が7割を超えていた。

 「郵便局」の信用を逆手に取り、保険知識に乏しい高齢者を狙った極めて悪質な事案である。職員に過酷なノルマが課せられていた背景にも、厳しい指摘が相次いだ。

 前代未聞の不祥事がまだ収束していない時に、次官が不当な情報漏えいも平然とやってのける。総務省の体質に問題があるのは間違いない。

 日本郵政グループと総務省は、法令順守意識の欠如と組織の統治不全が深刻な域に達していると認識すべきだ。

 鈴木副社長は、かんぽ問題を報じたNHK番組への郵政側の抗議を主導した。その際、放送行政にも携わった総務省時代の経歴を誇示したとされる。

 一連の経緯を踏まえれば、副社長が次官を通じ、総務省の処分案に影響を及ぼそうとしたのではないかとの疑念も拭えない。

 情報漏えいについて、副社長が取材に無言を貫いているのは理解に苦しむ。自ら説明する必要があるのはもちろん、日本郵政は内部調査で事実を究明する必要があろう。

 天下り先との癒着による不正は絶えることがない。

 旧通産省(現経済産業省)OBがトップだった商工中金では一昨年、国の支援に基づく危機対応融資の長期不正運用が発覚した。文部科学省でも違法な天下りあっせんが同年に判明し、次官の辞任や大量処分に発展している。

 官僚の専門的な知識や経験が民間企業で生かされることは、悪いことではない。ただ、忘れてならないのは、公正であるべき行政をゆがめないようにすることである。

 高市早苗総務相は「OBが日本郵政の取締役などに就くのは好ましくない」と述べ、省内から郵政への転身を今後認めない考えを示した。当然の反応だろう。癒着の根を断ち切るために、あらゆる努力を惜しむべきではない。

 日本郵政グループも、監督官庁とのもたれあいの構図を改めることが不可欠だ。解体的出直しを図らなければ、信頼回復はおぼつかない。