「地方にいて当たり前だと思っていることが、実は奇妙だったり、魅力的だったりすることがある。そんな部分に焦点を当て、うまく利用すれば面白い小説が書けるんじゃないかな」。第3回徳島新聞阿波しらさぎ文学賞の新しい最終選考委員に決まり、創作のヒントをアドバイスした。
同じ芥川賞作家で、過去2回選考に携わった吉村萬壱さんとの2枚看板となる。「たぶん吉村さんとはタイプが異なるので、選ぶ作品も違ってくるはず。お互いの一押しについて意見を戦わせ、もっともっと盛り上げていきたい」
会社員の夫(40)が徳島出身で、年に2回は夫の実家に帰省する。眉山、鳴門の渦潮、祖谷のかずら橋、大塚国際美術館など多くの名所に足を運んだ。徳島ラーメンもお気に入りで「甘辛く茶色いスープを飲んでいると、白いご飯が食べたくなる。少し広島のラーメンとも似ている」とご当地グルメにも関心を示す。
2018年に出版した短編集「庭」の巻頭に収録されている「うらぎゅう」は、徳島市の伝統文化「砂灸」にヒントを得た。徳島とも広島とも似ている方言も使った。もしも自分でこのコンクールに応募するなら「方言を生かしたい」。
広島市出身で、広島大では近世の滑稽本や戯作を学んだ。卒業後、同じ編集プロダクションに勤めていた同僚の勧めで小説家を志した。その同僚が夫だ。
「夫が面白がってくれる小説は、編集者も認めてくれる」。文学の良き理解者でもある夫の話になると、とても幸せそうな表情になった。広島市内の自宅で、夫と来年小学校に入学する長女との3人暮らし。36歳。