曲面の陶板画の仕上がり具合をチェックしている様子=2006年10月、滋賀県信楽町の大塚オーミ陶業信楽工場(同社提供)

システィーナ歌舞伎「GOEMON 石川五右衛門」で五右衛門役を演じる片岡愛之助さん=2011年11月、鳴門市の大塚国際美術館(写真提供 松竹株式会社)

 著名な西洋名画1000点以上を陶板画で展示する大塚国際美術館(徳島県鳴門市)。その代表格となるのが、展示スペース「システィーナ・ホール」だ。昨年末には米津玄師さんが初出場したNHK紅白歌合戦で生中継の舞台となり、日本中にその存在を知らしめた。今や観光客だけでなく、音楽ファンも「聖地巡礼」とばかりに多く訪れている。徳島県の魅力向上に大きく貢献しているホールの歴史をたどった。

 バチカンにあるシスティーナ礼拝堂と同じ造りを完全再現したシスティーナ・ホール。高さ16メートル、面積800平方メートルの天井には、旧約聖書にある「創世記」に基づく九つの場面が描かれ、正面には世界の終末を描いた「最後の審判」が構える。実物を原寸大で再現しており、1300度で焼き付けた陶板画は半永久的に色あせることはないという。

 ホールは2007年3月、美術館開館10周年の記念事業の一環として完成した。ホール自体はオープン時からあったものの、天井画の側面部である曲面を陶板で表現する技術が確立できておらず、天井部だけを再現した状態だった。

 美術館の陶板画制作を手掛ける「大塚オーミ陶業」(滋賀県信楽町)が、10周年に向けて完全再現を手掛けた。当時の責任者の的場幸雄特別顧問は「当初の計画に追加するのは相当苦労した」と振り返る。陶板を曲面にするだけでも例がないのに、実物と寸分たがわず、さらに軽くなければならないという難題だった。

 開発には試行錯誤を重ねた。曲面形状に合わせて作った焼き物の型に陶板を置き、焼く時の熱で軟らかくなるのを見越して型に沿わせる方法に行き着いた。陶板の厚さを従来の5分の1の約4ミリにして軽量化も実現させた。

 06年10月ごろから工事を始めた。現場で寸法を実測しながら陶板画の制作を行った。天井部と左右の壁画をつなぐ側面部など計約600平方メートルに陶板画パネル約千枚を取り付け、約6カ月で完成にこぎ着けた。

 現在ホールは、来場者が鑑賞するだけでなく、イベントに活用されている。コンサートや国内外の学会のほか、将棋や囲碁の対局、歌舞伎、結婚式など幅広い。

 09年1月には将棋の第58期王将戦七番勝負第1局が行われた。イベント開催の要望が殺到する中、日本将棋連盟から公開対局のオファーがあり、新たなファン層を開拓したいとの思いを共有したことから実現した。

 この年の9月からは「システィーナ歌舞伎」と銘打ち、新作歌舞伎の上演も始まった。西洋美術を備えた礼拝堂の「洋」と、伝統的な「和」のコラボレーションとして注目を集めた。

 恒例となったシスティーナ歌舞伎は来年2月13~16日の公演で10回目の節目を迎える。8回連続で主役を務める歌舞伎俳優片岡愛之助さんは、12年8月の製作発表会見で意気込みを問われ「システィーナ・ホールという特別な空間で演じさせていただく特別な舞台」と語っている。

 大塚国際美術館は「ホールは多目的スペースの機能も備えた展示室として活用してきた。今後も各種コンサートの開催を予定しており、来館者がより一層楽しめる空間として魅力を発信していきたい」としている。