政府が海上自衛隊の中東派遣を閣議決定した。日本関係船舶の安全を確保するのが目的だ。

 だが、今回のやり方では、自衛隊の海外派遣がなし崩し的に広がる恐れがある。根拠も必要性も乏しい派遣は容認できない。

 閣議決定を受け、河野太郎防衛相は自衛隊に派遣の準備を指示した。派遣されるのは護衛艦1隻で、これに、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に当たるP3C哨戒機が加わる。

 活動海域はオマーン湾やアラビア海北部などの公海に限定する。イランを刺激しないよう、ホルムズ海峡やペルシャ湾は除外した。来年1~2月から活動を始める予定だ。

 問題なのは、派遣の法的根拠を防衛省設置法の「調査・研究」としたことだ。

 この規定は抽象的で、地理的範囲も限定しておらず、歯止めなく適用が拡大するとの懸念が拭えない。加えて国会承認が不要のため、防衛相の判断で実施できる。政府関係者から「使い勝手がいい」とされる一方、「魔法のカード」のように使っていいのかとの批判が強いものだ。

 政府は当初、閣議決定も要らないとしていたが、与党の公明党の意向で修正した。

 派遣期間は1年間とし、延長する場合は再度、閣議決定する。活動内容を国会に報告する方針も決めたが、これらは当然の措置である。

 自民、立憲民主両党は、来年1月に衆院安全保障委員会で質疑を行うことで合意した。本来なら事前に国会で十分審議すべき問題である。閣議で決めた後に質疑するというのは順番が逆だろう。

 派遣の効果にも疑問がある。調査・研究は情報収集が主眼で、武器使用は正当防衛と緊急避難に限られ、商船を警護できない。

 状況が急変したら、武器を使って防護できる「海上警備行動」に切り替えるが、これには閣議決定が必要で切迫した場面への対応は難しい。しかも、武器を使用して防護できるのは日本籍船に限られる。日本の会社が関わる船舶は大半が外国籍だ。

 中東海域は米国とイランの対立で緊迫しており、自衛隊が戦闘など不測の事態に巻き込まれる懸念もある。

 武器を使用する可能性があるにもかかわらず、国会承認の手続きを定めた新たな特別措置法の整備を避けた。「派遣ありき」で急いだと言われても仕方あるまい。

 背景には、有志連合への参加を呼び掛ける米国と、友好関係にあるイラン双方に対する配慮があるのだろう。ただ、自衛隊が収集した情報は有志連合と共有する。米国からさらに協力を求められる恐れがある。

 原油の8割以上を中東からの輸入に頼る日本にとって、航行の安全が重要なのは言うまでもない。その確保のため日本が取り組むべきなのは、地域の対立を和らげ、安定に導く外交努力である。