今年5月に98歳の誕生日を迎える徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(97)。小説、随筆、ルポ、評伝、「源氏物語」の現代語訳、童話、少女小説など、これまでに400冊以上の本を出版してきた。今も文芸誌に連載を続ける現役最高齢作家の全著作の中から、思い出に残る一作について作文を募る「わたしの好きな寂聴作品感想文コンクール」(徳島県立文学書道館主催)が実施されている。寂聴文学の人気の秘密に迫る試みだ。
寂聴さんの最初の本は、出家前の1957年に34歳で出した短編集「白い手袋の記憶」。翌年に発表した「花芯」はポルノだと酷評され、文壇から冷遇された時期もあったが、61年「田村俊子」で田村俊子賞を受け復活。63年には「夏の終り」で女流文学賞を受賞し、作家としての地位を確立した。
伝記小説でも脚光を浴びた。歌人岡本かの子の生きざまを描いた「かの子撩乱」(65年)、「青鞜」の女性解放運動家伊藤野枝を主人公にした「美は乱調にあり」(66年)などを発表し、自我に目覚める近代日本の女性を描いた。
幅広い文学活動の後、51歳だった73年、中尊寺で出家得度、本名晴美を改め、寂聴を名乗った。その後も精力的に執筆を続け、良寛を題材にした「手毬」(91年)、一遍上人の生涯を描いた「花に問え」(92年)、西行法師を取り上げた「白道」(95年)の仏教3部作を発表し、97年に文化功労者に選ばれた。
10年がかりで「源氏物語」現代語訳全10巻を刊行したのは98年。古里の眉山など思い出の地を巡った「場所」(2001年)で野間文芸賞を受賞した。
長年の作家活動により06年、県人で初の文化勲章を受章した。
随筆では「放浪について」(72年)「寂聴巡礼」(82年)をはじめ、19年にも「命あれば」「寂聴九十七歳の遺言」を出版するなど、執筆意欲は衰えることがない。
県立文学書道館は今年4月9日~5月24日、特別展「いのち―90代の寂聴文学」を開く予定で、感想文コンクールは関連イベントの一環。
応募は小学生以上が対象。400字詰め原稿用紙3枚以内で未発表の作品。題名、選んだ作品名、住所、氏名、年齢、職業(学生は学校名と学年)、電話番号を明記する。締め切りは2月29日(必着)。最優秀賞1点、優秀賞数点を寂聴さんが委員長を務める選考会が決め、4月に発表する。
宛先は〒770―0807 徳島市中前川町2丁目22―1、県立文学書道館「寂聴作品感想文コンクール」係。問い合わせは同館<電088(625)7485>=新年は5日から開館。