政府は、昨年10月の消費税増税後の国内経済について「緩やかな回復基調にある」との認識を維持している。内需が底堅く、不振の外需を補っているとの見解だ。

 懸念される世界経済も米中貿易摩擦が一服し、英国の欧州連合(EU)離脱にも道筋がついたことで、回復に向かうとの見方が少なくない。

 五輪イヤーとなる今年の日本経済は祭典への期待感もあり、緩やかながらも成長を続けるのではないか。

 最大の課題は、うたげの後の「五輪の崖」をいかに回避するかだ。需要の急速な落ち込みを指摘する声がある一方、財政出動の余地は乏しい。海外の動向も含め細心の注意が必要だろう。

 五輪の崖とは、大会を境に競技施設やインフラの建設需要が一巡するため投資が縮小し、不況に転じることだ。

 前回1964年の東京五輪後に経済成長が鈍化、2000年のシドニーや04年のアテネ大会後も開催国の景気が低迷した。

 政府は先月、26兆円規模の経済対策を打ち出した。その柱の一つが五輪後を見据えた景気下支え策で、大規模な建設プロジェクトや公共投資を盛り込んでいることから、落ち込みは限定的とみられる。

 とはいえ、個人消費は不安が多い。東京都は17年、五輪関連の消費押し上げ効果を5000億円程度と試算しており、反動減は必至だ。

 消費税増税に伴うポイント還元制度が大会直前の6月に終了する影響も想定され、不透明感は拭えない。企業活動を活性化させる規制緩和や、賃上げによる消費支援などが今後の鍵となる。

 日本経済の成長に欠かせないのが、自由貿易の拡大だ。1日には米国との2国間貿易協定が発効した。

 日本は牛肉など農産物の市場を環太平洋連携協定(TPP)の水準内で開放し、米国は幅広い工業品の関税を撤廃・削減する。

 国内農家には脅威となる半面、食品価格の値下がりが期待できるため消費者にとってはプラスだ。米国向け輸出にも追い風となる。

 問題は「第2段階」の交渉だ。日本は自動車分野の関税撤廃を求める構えだが、11月の米大統領選を控え、トランプ氏が応じる公算は小さい。しかし、この交渉をまとめられなければ、「ウィンウィン」(安倍晋三首相)などと言えなくなろう。

 米国以外との交渉も急がれる。政府は中国やインドなど16カ国と交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結や、英国との自由貿易協定(FTA)を早期に締結する意向のようだ。

 新たな貿易圏誕生による効果は計り知れない。日本の存在感を高める上でも極めて重要である。

 第2次安倍政権を支えているのは、堅調な景気だ。それが悪化すれば求心力は一気に低下しかねない。政権にとっては正念場の年と言える。