正月料理で食される魚介類の5傑はブリ、タイ、カズノコ、エビ、サケとなるらしい。大手食品メーカーの調査結果にある。ブリは出世魚、タイは「めでたい」など、縁起が良いとされる納得の顔ぶれである

 普段なら、これに続く6番人気のサンマを探せば、上位の20種にすら見当たらない。いつものあの方にはご遠慮いただいて、晴れの席ぐらいはぜいたくを、ということだろう

 そんなところか、と思っていたら、和歌山や奈良では祝いの一品として、姿ずしや昆布巻きに使うという。新年の膳に、サンマが欠かせない地方もあるようだ。所変われば、である

 昨年は記録的な不漁に見舞われた。水揚げ量は4万トン余り。最も少なかった50年前の5万2千トンをさらに下回った。海水温の上昇や中国、台湾の乱獲と、いろいろな原因が指摘されての非常事態である

 牛肉が100グラム40銭の頃、サンマは一皿8銭だった。林芙美子が小説『放浪記』に記している。連載されたのは昭和初期。<熱い御飯の上に、昨夜の秋刀魚(さんま)を伏兵線にして、ムシャリと頬ばると、生きている事もまんざらではない>(同)

 そんな幸福感に、これからも浸れるだろうか。所変わっても、庶民の味方に変わりなかったサンマの変調。このままでは全国津々浦々、正月にしか味わえない、高根の花になりはしないか。