本州と淡路島を結ぶ世界最長のつり橋・明石海峡大橋が開通してから5日で20年を迎える。本州四国連絡高速道路(神戸市)は橋に親しんでもらおうと、2005年から主塔最上部からの眺めを楽しむ体験ツアー「ブリッジワールド」を開いており、人気を呼んでいる。最上部の高さは海抜289メートルで、眉山の標高(290メートル)とほぼ同じ。絶景とスリルが味わえるツアーに同行した。
ブリッジワールドは毎年4~11月に開いており、同行したのは今季の開幕を記念した3月31日のオープニングツアー。地元の兵庫県を中心にした新中学1年生と保護者の20組40人が招待された。
参加者は、本州側の橋のたもとに位置する学習施設「橋の科学館」(神戸市)で建設の歴史や工法などの説明を受けた後、ヘルメットをかぶり出発。自動車道の14メートル下にある管理路を通って主塔に向かう。
海上からの高さは約50メートル。足元は格子状で海が見え、足がすくむ。主塔までの距離は1キロ。怖がる子もいれば、笑顔で下を見ながら歩く子も。「ガタン、ガタン」。上を走る車の振動音が恐怖感を駆り立てる。
主塔部に到着すると、エレベーターに乗って「98」階へ。最上部には縦4メートル、横30メートルのスペースがあり、本州側の市街地や淡路島側の山々が見渡せる。高さ1・3メートルほどの防護柵から身を乗り出して下を向くと、橋を通る車がミニカーほどの小ささに見え、吸い込まれそうな気がする。
参加した高橋颯生(そうき)さん(12)=神戸市=は「少し怖かったが、橋の巨大さが分かり、高い技術で造られていることを肌で感じた」と興奮気味だった。
ツアーの参加者は開始1年目の7463人から徐々に増え、昨年は過去最高の1万1557人を記録した。人気が高いため14年の途中から、34人だった各回の定員を42人に増やした。2カ月前から募集を受け付けているが、今年の4、5月分は既にほぼ予約でいっぱいだ。
◆メモ◆ ブリッジワールドは4~11月の木、金、土、日曜日と祝日に開いている。参加できるのは中学生以上で、料金は中学生が1500円、高校生以上が3千円。インターネットかファクスで申し込む。問い合わせはブリッジワールド事務局<電078(784)3396>。
公共施設や工事現場見学インフラツーリズム全国で広がる
明石海峡大橋のブリッジワールドのように、公共施設や工事現場の見学を観光振興に生かす動きは「インフラツーリズム」と呼ばれ、全国で広がっている。普段公開されていない場所に入って間近で見られるため、関心を集めているようだ。
政府も力を入れており、外国人旅行者の取り込みなどを目指して2013年にまとめた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」で、魅力ある観光地域づくりの一環としてインフラツーリズムの推進を掲げている。
国土交通省は16年1月に専用サイトを開設。ダイナミックな放流で知られる宮ケ瀬ダム(神奈川県)や、世界最大級の地下放水路・首都圏外郭放水路(埼玉県)など、各地で開かれている見学会やツアーを紹介している。
徳島県内では、那賀町の長安口ダム改造工事や四国横断自動車道・徳島ジャンクション―徳島東インターチェンジ(仮称)の建設工事など6カ所が盛り込まれている。