朝日を浴び、湾に点在する島々がシルエットとして浮かび上がる水床湾=海陽町宍喰浦

 阿南市から高知県室戸市にかけて続く海岸線は、1964年に室戸阿南海岸国定公園に指定されている。指定対象が海岸と周辺の島だけという全国で唯一の公園区域である。

 その中に海陽町宍喰浦の水床湾が含まれている。旧国道に面していて現在の国道からは見えないため、少しマイナーなイメージがあるかもしれない。しかし、古くから景勝地として知られる。静かな海に大小の島が点在する光景は、日本三景の一つ、松島に似る。

 戦前に国道55号が整備された際、観光バスの順路になっていたことが記録写真から分かっている。亜熱帯性の樹林やサンゴ、色とりどりの魚が泳ぐ美しい海は、多くの観光客を楽しませたという。

 水床湾から旧国道を竹ケ島に向かって進むと、右手の山肌に波状の模様になった漣痕を確認できる。全国でも珍しい「波痕の化石」で、国指定の天然記念物。4千万年ほど前に海面下でできた波の痕が固結し、その後の地殻変動で現在の場所に露出している。

 さらに進んで左手に視界の開ける場所が、水床湾を眺めるベストポイント。今の時季、早朝に訪ねると大小の島の間から朝日が昇ってくる。さざ波が立つ水面が黄金色に染まり、島がシルエットとして浮かぶさまは、美しく見飽きない。