何事もなかったかのように事業を進めていいのか。政府の見識が問われよう。

 統合型リゾート施設(IR)の中核となるカジノを規制・監督するカジノ管理委員会が、内閣府の外局として発足し、初会合を開いた。今月中には、国内3カ所を上限とするIR設置の選定基準を示す基本方針も策定される。

 いずれもIR整備法に基づき、政府が決めたスケジュール通りに動いている。

 だがIR事業を巡っては、衆院議員の秋元司容疑者が中国企業から計370万円の利益供与を受けた収賄の疑いで、東京地検特捜部に逮捕されたばかりだ。

 さらには贈賄側の中国企業の幹部が、他の国会議員5人にも現金を渡したと供述した。このうち4人は受領を否定しているものの、国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の副会長だった下地幹郎元郵政民営化担当相は「事務所職員が100万円受け取った」と認めている。

 カジノ解禁が利権の温床となった疑惑が広がっている。そんな重大局面にもかかわらず、既定路線で事業を進めようとする政府の姿勢は理解に苦しむ。

 安倍晋三首相が成長戦略の一つに位置付けている目玉政策とはいえ、菅義偉官房長官が「IR以前の問題ではないか」と述べ、事件と事業との切り離しを図っているのも納得し難い。

 政府が最優先に進めなければならないのは、疑惑の全容解明である。事業を保留して取り組むべきだ。

 IR関連法は2018年7月のIR整備法も、16年12月の整備推進法も、ともに与党の強行採決で可決、成立した経緯がある。秋元容疑者は推進法を通過させた衆院内閣委員会で委員長を務め、整備法可決時はIR担当の内閣府副大臣でもあった。

 法の成立過程に問題点はなかったのか、さかのぼって洗い直すべきだろう。

 IR事業者の選定基準が確定すれば、日本でのカジノ経営に意欲的な海外事業者の売り込みが一段と活発になると予想される。活動が過熱し、第2、第3の汚職を起こしてはならない。

 徳島新聞社加盟の日本世論調査会が事件発覚前の昨年12月上旬に行った調査では、IR事業への反対が64%を占めた。事件を受け、国民の抵抗感はさらに増している可能性が高い。

 調査結果の反対意見には、ギャンブル依存症の増加や生活環境の悪化に対する懸念が多かった。多くの国民が今なお首をかしげているというのに、IR事業は推し進めるべきものなのか。

 立憲民主、国民民主、共産の野党3党はIR整備法の廃止法案を、通常国会初日の20日に共同提出する。

 賄賂授受に関する疑惑の全容解明を図りながら、IR事業の必要性や意義について改めて議論を深めることが求められている。