「疑獄」はおどろおどろしい響きの言葉だ。出典の中国古典『賈誼(かぎ)新書』には「梁(りょう)かつて疑獄あり、半(なか)ば以(も)って罪に当たると為(な)す、半ば以って当たらずと為す」とある。かつては、入獄させるか否かが明確でなく、犯罪事実があいまいな事件を意味した

 この種の事件は多かれ少なかれ、政官財界に波及する。そこから、政治問題化した大規模な贈収賄事件を指すようになったという。その疑獄に発展するかもしれないのが、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業に絡む汚職事件である

 国会議員の逮捕はまだ1人だが、元議員を含め7人が家宅捜索や事情聴取を受けている。このうち1人は、中国企業側から現金100万円を受け取ったことを認めた

 企業が危ない橋を渡ってでもカジノに参入しようとするのは、甘い蜜の香りがするからだろう。東京地検特捜部は、そこから汚職のにおいをかぎ取ったのかもしれない

 戦後間もない昭電疑獄、吉田茂内閣が倒れるきっかけとなった造船疑獄を手掛け、「特捜の鬼」と呼ばれた河井信太郎検事が残した言葉がある。「特捜検察は国家機関に巣くったがんを切除する外科医のようなものだ」

 その特捜がメスを振るい、国会議員を逮捕したのは約10年ぶり。がんは全て取り除かねばなるまい。あいまいな「疑獄」で終わらせてはならない。