クジラで一杯、どうかね。そんな計画が仲間内で盛り上がり、料理担当が高知県の室戸市まで買い出しに行った。「珍しいのがあったんよ」と持ち帰ったのがマンボウ。海の中をゆらり、人畜無害を絵に描いたような魚である

 「あんなにかわいいのに、鍋にしたのかよ」「ほんなら、やめとけ」「いやまあ、ここは一つ」と、お約束のやりとりの後、よそってもらった取り鉢に、はしをつけた

 身はふくよかで、くせはなく、肝もいい。内臓はちょうど焼き肉のミノのよう。いやまあこれは、機会があれば、迷うことなく食べていただきたい、と自信を持ってお勧めできるほど、うまい

 困ったのは、ぱくぱくいっているその合間、ふと、泳いでいる姿が浮かぶことだ。うまい、確かにうまいのだけれど、口の中に広がるのは、どこか切ないうまさである。でも、どうか。もしマンボウがかわいくなければ

 人は身勝手だ。頭がいいとか、かわいいとか、生まれながらにして、いかんともし難いことで、生物の命に軽重をつける。一つしかない命という点では、牛や豚も平等なのに

 アニマルウェルフェア(動物福祉)は、家畜であっても苦痛やストレスを与えないように飼育しようという考え方だ。近年、欧米では常識になりつつある。家畜とも「どうせ」以上の付き合いが必要なようである。