徳島県立文学書道館の特別展「寂聴『手毬(てまり)』―良寛と貞心(ていしん)の愛」が、8日から5月27日まで開かれる。徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(95)が、小説「手毬」の中で、良寛と貞心尼の愛をどのように捉えたかに迫る。
「手毬」は寂聴さんの68歳の作品。1990年に文芸誌「新潮」に1年間連載され、翌年、出版された。江戸後期の禅僧良寛への純愛を、貞心尼の視点で描いた。
特別展では、良寛と貞心尼の相聞歌、二人を描いた絵など19点を展示。寂聴さんの直筆原稿や、小説の内容を振り返るパネルなどが並べられる。
「はちすの露」(1835年、新潟県柏崎市立図書館蔵)は、最初の良寛歌集で、全て貞心尼の自筆で書かれている。下級武士の家に生まれ、医家に嫁ぎながら離別して出家した貞心尼。憧れていた40歳年上の良寛に出会い、亡くなるまで敬慕し続けた。歌集を通じて尼僧の情愛に思いをはせることができる。
維馨尼(いきょうに)に宛てた良寛書簡(1818年、良寛記念館蔵)は、61歳ごろの書。漢詩一首が書かれており、末句の「天寒し自愛せよ」に良寛の優しさが読み取れる。
良寛を敬慕した画家の絵も注目される。安田靫彦(ゆきひこ)の軸「良寛と貞心尼」は二人の初対面を描いた。中村岳陵(がくりょう)の「月下舞踊の図」、富川(とみがわ)潤一「良寛と童」などからも良寛の人柄をしのぶことができる。
≪良寛(りょうかん)≫1758~1831年。新潟県出雲崎の名家に生まれ、若くして出家。岡山で修行した後、39歳で帰郷。生涯、寺を持たず、托鉢をしながら詩歌と書を残した。
21日午後2時から県立文学書道館で、講演会「千の風に吹かれながら、良寛について想(おも)う」がある。芥川賞作家で作詞作曲家の新井満さんが、自作の良寛関連書などについて話す。先着200人(要申し込み)。問い合わせは同館<電088(625)7485>。