わが家の小さな庭に、ロウバイの木が1本立っている。知人にもらった種を植えて10年の今年、初めて花を付けた。方々へ伸びた枝に5、6個ずつ

 <琥珀に似たる数朶の花をつづりぬ>。ロウバイ好きと伝わる芥川龍之介が随筆に残した粋な表現を思い出しつつ、まじまじと眺めた。半透明で光沢のある黄色い花びらは、名の通りろう細工のよう。よくまあ立派に育ったものである

 よくぞ成長という感慨なら、きのう試験会場に向かう姿を見てじんときた方もおられよう。受験シーズン本番を告げる大学入試センター試験が始まった。第一関門に挑む受験生は揚々として、どの顔もきりりと見える

 31年続いたセンター試験は今年で最後。とはいえ、来年からの新試験で目玉だった英語民間試験や記述式問題は見送られ、具体像は不明なままだ。首尾良く合格すれば関係ないが、万が一を考えて怒る受験生がいるのも無理はない。ただ、今は目の前の設問に集中しよう。わが娘にもそう言い聞かせる

 初日の手応えは皆、どうだっただろう。悔やむ結果なら、顔を上げなくてもいい。でも心意気だけは失わず、最終日に臨んでほしい

 ロウバイの花は下向きに咲き、芳香を放つ。こんな句がある。<蝋梅の咲きうつむくを勢いとす>爽雨。下を向いていても、いやいやどうして力強いのである。