徳島県の飯泉嘉門知事とドイツ・ニーダーザクセン州のシュテファン・ヴァイル首相らは27日、第1次世界大戦中に鳴門市にあった板東俘虜(ふりょ)収容所の関連資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)に共同で登録申請することを正式に決めた。2018年春に申請し、19年度の登録を目指す。
徳島市の徳島グランヴィリオホテルで共同申請協定書の調印式があり、知事とヴァイル首相、泉理彦鳴門市長、同市の姉妹都市リューネブルク市のウルリヒ・メドケ市長の4人が署名した。
共同申請により、ドイツ兵捕虜が家族に宛てた絵はがきなど、リューネブルク市文書館が保有する50点以上が申請資料に加わる。収容所で捕虜がアジアで初めてベートーベン「第九交響曲」を演奏した際のプログラムや収容所内で発行された新聞などと合わせ、申請資料は約700点に上る見通し。
知事は「収容所での奇跡の交流を史実として世界に発信し、世界平和に貢献する絶好の機会が訪れた」と意義を強調。ヴァイル首相も「敵から友人へと交流を発展させた例は他にはない。一緒に登録を目指したい」と述べた。
記憶遺産への登録申請は、2カ国以上が共同で行う場合、国内選考を経ずにユネスコに直接申請できる。今後は4者がいかに協力し、記録物の貴重さを理解してもらえる申請資料を作成するかが鍵となる。
会場ではこのほか、技能者の育成に取り組む産官学連携団体・県産業人材育成交流コンソーシアムと、同州のブラウンシュヴァイク・リューネブルク・シュターデ手工業会議所との交流協定の締結式もあった。訓練生や指導員らを相互に派遣するなどし、技術者の技能向上を図る。