大学入試センター試験は今回が最後となり、共通一次試験の後継として1990年から続いた30年の歴史に幕を下ろした。来年度の受験生からは「大学入学共通テスト」を受けることになる。

 なぜ、センター試験では駄目なのか。変更に至った明確な根拠は、今も国民に示されていない。

 「入試改革ありき」で突き進んだ結果、共通テスト最大の目玉だった英語の民間検定活用、数学と国語の記述式導入は、土壇場で延期に追い込まれた。受験生や保護者、教師は振り回されるばかりだ。

 実施まで1年。共通テストは、センター試験とどう違うのか。関係者にこれ以上の動揺を与えないよう、改めて説明する必要があるのではないか。原因を作った政府には、重い説明責任がある。

 現在の混迷に至る入試改革は、官邸主導で始まった。政権に復帰した安倍晋三首相は2013年、「教育再生実行会議」を発足させ、教育改革の司令塔と位置付けた。

 実行会議は「一発勝負で1点刻み」の選抜方法を見直し、センター試験に替わる「達成度テスト」を提言した。年に複数回実施するとともに、細かな点数差にこだわらず、得点を大まかにグループ分けして大学側に提示する仕組みだ。

 理想としたのは、年間7回の受験機会があり、全米や世界から多様な人材を集める米国の共通試験。グローバル社会で通用する人材を求める産業界の後押しがあった。

 知識偏重から「課題を解決する力」を評価する試験へ。総論は立派だが、多様で潜在力ある人材を選べない原因を安易にセンター試験と結び付けたことが、その後の迷走につながった。大改革には、裏付けとなるデータや分析が必須である。

 提言を引き継ぎ、制度設計を任された中教審や有識者会議は、高校、大学側の「各論反対」に後退と妥協を強いられる。教育現場を説得できる根拠を欠いていたためだ。

 「一発勝負と1点刻み」からの脱却は撤回。萩生田光一文部科学相の「身の丈発言」で、英語民間検定と記述式の導入が見送りとなったため、センター試験との差異はますます分かりづらくなった。

 導入見送りを受けた文科省の検討会議の初会合が15日に開かれ、日本私立中学高等学校連合会長は「何年も費やして決めたことをゼロにするのか」と反発した。

 裏切られた思いは分かるが、入試改革を商機ととらえ、対策指導を先取りしてきた私立校の思惑もあるだろう。少子化に悩む教育産業はなおさらだ。

 受験テクニックと情報に恵まれた人材が有利になれば、地域的、経済的な格差は教育格差に表れる。その象徴が、合格者の6割を関東出身者が占める東大だ。

 入試改革の理念は一貫して「多様な人材」の発掘と育成だった。もう一度、原点に戻って方策を考えるべきだ。