人が飛び出してはこないだろう。前の車が急ブレーキをかけることはないだろう。そんな「だろう運転」は事故のもと。どこかに危険が潜んでいるかもしれない、と注意しながらハンドルを握る「かもしれない運転」を心掛けるのがドライバーの鉄則だ

 が、事故が起きた後で、もっと気を付けていれば、と後悔することが往々にしてある。それは車の運転に限らない。福島第1原発事故もそうだった

 事故の3年前、15・7メートルの津波が襲来する恐れがあるとの試算が東京電力幹部に示された。しかし、防潮堤建設などの対策は取らなかった。事故の被害の大きさを考えれば、交通事故とは比べものにならないくらい重大な過失と言える

 強制起訴された東電旧経営陣3人は「試算の信頼性が低く、それほどの津波が来るとは思わなかった」と釈明した。東京地裁も「事故が絶対に起きないレベルの安全性が求められたわけではない」とし、昨年、無罪を言い渡した

 その判決を否定するような決定だった。広島高裁は四国電力の伊方原発3号機を巡り、地震や火山噴火の危険性に対する認識が甘く、対策が不十分だとして、運転を認めない判断をした。電力会社には「厳しすぎる」と映ったろう

 福島の事故から学んだ「だろう運転」の危うさを忘れてはいないか。高裁の決定はそうも聞こえる。