全国の盲導犬利用者による「全日本盲導犬使用者の会」の総会と交流会が27日、徳島市の阿波観光ホテルで開幕した。参加者が続々と降り立ったJR徳島駅のホームでは、高齢のため盲導犬を引退し、小松島市のボランティア宅で暮らすラブラドルレトリバーのユメ(13歳、雌)と、長年生活を共にした大分市の視覚障害者碓井由子(よりこ)さん(68)が約3年ぶりに再会した。ユメに会うために徳島入りを決めた碓井さんは涙が止まらなかった。
ユメと碓井さんは2005年11月からユメが引退する14年2月までの約8年間、大分市の碓井さん宅で一緒に暮らした。ユメの引退後、碓井さんは足腰が悪くなって盲導犬を持たなくなり、外出する機会が減った。徳島は遠く離れた場所だったが、ユメとの再会を願って交流会への参加を決めた。
盲導犬は一般的に10歳で引退し、引退後はボランティア宅で余生を送る。ユメは小松島市横須町の介護ヘルパー柴山里美さん(51)に引き取られた。現在、人間に換算すると80歳近い。
徳島駅のホームでユメは、柴山さんと一緒に碓井さんの到着を待った。列車から降りる碓井さんを見つけると、尻尾を振りながらゆっくりと歩み寄り、足元にじゃれついた。その後、碓井さんがリードを取り、交流会の会場へと向かった。
久々にユメと歩いた碓井さんは「歩き方が年取ったなあ。私もやけど」と声を詰まらせた。銀行の窓口で名前を呼ばれると碓井さんより早く反応したり、段差がある所を止まって教えてくれたりしたユメとの生活を思い出した。「病気せんように元気に暮らしてほしい」。碓井さんは、大粒の涙を流しながらユメの背中をなでた。
ユメは碓井さんと数時間過ごし、会場を後にした。
◆徳島市で盲導犬利用者が総会
「全日本盲導犬使用者の会」は27日、徳島市の阿波観光ホテルであった総会で2017年度の事業計画などを決めた。
盲導犬とともに参加した利用者62人を含む28都道府県の約110人が参加。冒頭、15年10月にバックしてきたトラックにひかれて死亡した徳島市の視覚障害者山橋衛二さん=当時(50)=と盲導犬ヴァルデスの冥福を祈り、出席者全員で黙とうした。
本年度の新規事業として、盲導犬利用者が親切を受けた人に感謝の言葉が書かれたシールを手渡す「ありがとう運動」を始めることを決めた。8月から全会員で運用する予定。
郡司ななえ会長(71)は「山橋さんの事故のような悲劇を繰り返さないために、利用者自らが社会に向けて積極的に存在を発信していく必要がある」と話した。
利用者らは28日に歩き遍路や藍染、大谷焼、29日には阿波踊りなど、徳島の魅力を体験する。期間中は県内を中心にボランティア約210人が運営に協力する。