バレンシーアの店内。所狭しと並ぶオブジェがネオンの妖しい光に照らされている=徳島市八万町大野

おびただしい数の彫刻や調度品に迎えられる

バレンシーアのハンバーグステーキ定食。メニューはボリュームたっぷり

食品サンプルも妖しい感じに

松永鶴太郎さん

出入り口前にたくさんの彫刻が並ぶバレンシーア

 徳島市八万町大野のレストラン「バレンシーア」は風変わりな店構えで知られる。30年以上にわたり、年中無休で24時間営業を続けている。「働き方改革」が叫ばれる昨今、ひときわ異彩を放っている。

 園瀬川のほとりにひっそりと建つ白い店舗。店先に欧風アンティーク調の石像が並び、不思議な雰囲気を醸し出す。駐車場には愛媛や香川といった県外ナンバーの車も。店内に入ると、さらにおびただしい数の彫刻や置物に迎えられる。調度品はネオン管の妖しい照明に照らされ、異世界に迷い込んでしまったかのようだ。

 県内でも洗練されたカフェやレストランが設けられる中では異色で、いつしか徳島の隠れた名所になっている。SNS(会員制交流サイト)の普及に伴い、県内外の来店客が「徳島最強の珍スポット」「すごかった」などと面白がって投稿し、それがまた新しい客を呼ぶ。

 店主の松永鶴太郎さん(72)は「こういうカラーが強い店はあまりないやろ」とまんざらでもない様子。

 定食をはじめとするメニューはどれもボリュームがある。「明日への活力にしてほしいから」と松永さん。健康維持には独特の持論があるようだ。例えば、同店のうどんのつゆは時間を置くと固まる。食物繊維を多く取ってもらうため、寒天を加えているからだという。

 5年前から全国放送のバラエティー番組でしばしば取り上げられ、県外にも知られるようになった。店にスポットが当たるきっかけとなったのは店構えではなく、一日も休まず24時間営業を続ける松永さん夫妻の働き方だ。

 松永さんは毎日深夜0時に出勤し、夕方まで店で接客する。妻が出勤してくると交代。店舗2階に設けた自室に戻り、入浴、食事の後、午後8時にベッドで横になる。しかし11時半には起きて支度を始める。こうした生活を一日も欠かさず続けている。ただレジ裏でうたた寝し、なじみの客に起こされることもしょっちゅう。

 松永さんは「仕事が根っから好き。体が慣れているので、苦にならない」と言い、それを支える妻への感謝を忘れない。スタッフは夫婦の他に調理担当と接客担当が数人。限られた人員で経費を抑えている。

 バレンシーアの開店は1986年。閉業していた喫茶店「バレンシア」の建物をオーナーから借り受け、松永さん独自のセンスで改装し、24時間営業のレストランにした。店内の派手なネオンはコレクションのオブジェを目立たせるため。まだ県内にファミリーレストランチェーンが普及していなかった頃で、深夜を過ごす若者らに受けた。

 松永さんはそれまで徳島市住吉などで24時間営業のゲーム喫茶を営んでおり、合計40年以上、深夜に店を開けてきた計算になる。スタッフの高齢化を見据えながら「元気なうちは一日でも長く続けたい」と話している。