徳島市中央公民館(徳島町城内)で29日、ポルトガルの文人ヴェンセスラウ・デ・モラエス(1854~1929年)のゆかりの資料を常設展示する「モラエス展示場」の一般公開が始まった。晩年の17年間を過ごした同市伊賀町の自宅書斎を再現したスペースなどもあり、早速、モラエスファンらが訪れ、熱心に見入っていた。
モラエス展示場は3階会議室(103平方メートル)を活用。生前に故国で出版された「徳島の盆踊り」のポルトガル語版、象牙板で作った父親の肖像画など、徳島大空襲(45年7月)での焼失を免れた遺品を含む約450点が並んだ。
29年7月1日の死の1カ月ほど前、最愛の妹フランシスカに宛てて「家に春が来ている。お前の朝顔は芽を出しているに違いない」などとつづったはがきなどもある。
会場では、案内役として「とくしま観光ガイドボランティア会」の会員が常駐。来場者はモラエスの作品の魅力や、徳島での生活などについての解説に耳を傾けていた。
日本文化を専攻している四国大4年中川直紀さん(22)=徳島市吉野本町=は「徳島の方言を調べていて、モラエスのことを知った。モラエスを通して昔の徳島がどんな風だったのか知りたい」と興味深そうな様子だった。
徳島日本ポルトガル協会の桑原信義会長は「私たちも7月1日のモラエス忌などの節目に合わせた催しを企画し、公民館の利用者らにアピールしていきたい」と話した。
眉山山頂にあった旧モラエス館が2015年に閉鎖された後、徳島駅前アミコビルと徳島大常三島キャンパスに分散展示されていた収蔵品を集約し、約2年ぶりに展示した。
開館時間は午前10時~午後4時。火曜休館。入場無料。