河村武明さん

 自称「日本一無口な絵売り」になって17年。徳島県内外で個展を開くほか、パワーポイントと妻の代読に身ぶり手ぶりを交えて伝える講演も550回を超えた。失語症などの障害がある自身の半生を踏まえ、表現活動を通じて「ありがとうのチカラ」を伝え続けている。

 阿南市領家町出身。阿南中、富岡西高を経て京都産業大を卒業後、大阪府の鉄工会社で約3年間働いた。高校時代から音楽が好きで、会社を辞めて友人とバンドを結成、プロのミュージシャンを志した。ボーカルとギターを担当し、京都市内を中心に活動していた。

 ミュージシャンとしてようやく芽が出始めた34歳のある日、脳梗塞で倒れ、2日間生死をさまよった。一命を取り留めたものの言葉を発せられず、耳も聞こえない。ギターをかき鳴らす右手も動かない重い後遺症が生じた。

 「死んだ方がましだ」。絶望の中、映画監督・北野武さんの作品「HANA―BI」で、大杉漣さん演じる半身不随の刑事が絵を描くシーンを見た。「自分も描いてみよう」。毎日左手で描いては、繁華街などの路上で販売し始めた。次第に各地で個展を開催するようになり、2007年には大阪市の百貨店で北野さんと共に個展を開いた。

 「どんなに苦しいことがあっても『ありがとう』と言えることが大事」。感謝すること、挑戦することの大切さを伝えようと、講演活動にも力を入れている。「人生で不可能なことは意外と少ない。この『たけ(武)』を見てほしいといつも思っている」

 徳島に帰省したときの楽しみは徳島市の阿波踊り。「『見る阿呆』専門。毎年、息子と一緒に見ています」。京都府長岡京市で妻、長男と3人暮らし。52歳。