先輩ママが子育て家庭を訪問して無料で相談に乗ったり育児を手助けしたりするNPO法人子育て支援ネットワークとくしま(Kネット、徳島市)の事業「ホームスタートとくしま」が、休止の危機に陥っている。県の委託を受けて運営してきたが、県の予算措置が2016年度限りで終了したため、運営資金の当てがなくなった。子育て世代からの依頼は続いており、スタッフは頭を抱えている。
事業は、子育て支援施設などに行くことができない母親らの孤立を防ぎ、地域とつながるきっかけをつくろうと、Kネットが県から委託を受ける形で12年11月にスタートさせた。これまでに13市町の46人が先輩ママとして登録。1件当たり7回程度の訪問を、4年半で延べ75件行った。
先輩ママの活動はボランティアだが、交通費は支給している。さらに、先輩ママが受ける研修の講師に払う謝礼や調整を担当するスタッフの人件費なども必要。Kネットは別の団体の基金を受けた13年度を除き、15年度までは国からの交付金を原資とする県の委託費(約235万~320万円)のみで運営してきた。
16年度は委託費が約50万円に減額され、調整担当のスタッフが無償で活動するなどして乗り切った。しかし、国の交付要件が厳格化されたことで17年度は交付金が受けられなくなり、県の委託費もなくなった。現在、収入の見込みは全くない。
4月以降も5件の依頼と5件の問い合わせがあったという。松﨑美穂子理事長は「困っているママたちにできる限り救いの手を差し伸べたい」と事業継続の道を探る考えで、徳島市などに助成を要望することにしている。
各地のホームスタート事業を統括するホームスタート・ジャパン(東京)によると、事業は現在、徳島など27都道府県の89地域で行われており、うち約50地域が市区町村の委託事業となっている。Kネットに事業を委託していた徳島県次世代育成・青少年課は「市町村に事業実施を検討してもらえるよう、情報提供を続けていきたい」としている。
長男が3カ月の時に事業を利用した徳島市川内町加賀須野の仲濱綾乃さん(26)は「寝不足で出掛けることもできなかったときに、自宅に来て子どもを抱っこしたり話し相手になったりしてくれて助かった。その後も交流は続いていて心強い」と話し、事業の必要性を訴えている。