徳島県内の量販店や酒類販売チェーンなどで6月1日に、ビールや発泡酒などの販売価格が上がる見通しだ。改正酒税法が同日施行され、仕入れ原価に人件費や運送費などの販売管理費を加えた「総販売原価」を割り込む安売りが規制されるため。仕入れ原価にわずかな利益を上乗せするだけの安い価格で販売してきた小売店では1割以上の値上げは避けられないとの見方が強く、売り上げが増える夏本番を前に危機感を強めている。
改正酒税法では、総販売原価を下回る安売りを続けた小売店を国税庁が調査する。安売りを続けた場合、改善命令や業者名の公表、免許取り消しなどの行政指導ができるようになる。
中でも量販店などが目玉商品として、仕入れ原価にわずかな利益を乗せるだけで安く販売してきたビールや発泡酒などで影響が大きい。量販店のキョーエイ(徳島市)は「販売管理費などを精査中だが、同様に価格が安いチューハイも含め、1割は上げざるを得ないのでは」とみる。
同社の売れ筋のビールの箱入り(350ミリリットル、24本)価格は税抜きで4千円強。食品事業部の担当者は「ビール類やチューハイは酒類の売り上げの半分を占める。品ぞろえを強化するなどの対応を考えたい」と言う。
徳島、高知両県で11店舗を展開する酒類・食料品販売のリカオー(徳島市)も「ビール類で1割は値上げする可能性が高い。ビールと同様に販売価格を抑えてきた一部の日本酒や焼酎なども特売はしにくくなる」との見方だ。宮本実社長は「書き入れ時の夏を前に売り上げ減が予想される。スーパーにないような酒の種類を増やしたり、食料品価格を下げたりして店の魅力を出したい」と話す。
仕入れ原価に加える販売管理費を巡っては、会社によって人件費や広告費などが異なるにもかかわらず、国税庁は統一基準を定めていない。このため量販店などは、どの程度の額を仕入れ原価に上乗せすべきかライバル店の値上げ幅を見ながら頭を悩ませることになりそう。徳島市の酒類販売業者は「できるだけ値上げ幅を抑えたいが、いくらで売れば違反しないか分からない。当面1割は上げざるを得ない」と言う。