徳島県内の指定避難所1116カ所のうち、耐震診断が行われていない施設が191カ所あることが、各自治体への取材で分かった。耐震性が不十分な施設も46カ所あり、耐震化率は80%に満たない。多くの自治体は財政の厳しさを理由に挙げるが、昨年4月の熊本地震では指定避難所の損壊が相次いで避難に混乱を来しただけに、対策が急がれる。
市町村ごとの指定避難所の状況(16日時点)は≪別表≫の通り。耐震診断が行われていない施設は12市町にある。鳴門市が58カ所と最多で、市内全体の避難所数の39%を占める。三好市では29%の28カ所、那賀町では30%の20カ所あった。
耐震性が不十分な施設は12市町村に46カ所あり、全ての指定避難所が耐震性を満たしているのは阿南、石井、上勝、北島、藍住、上板の6市町にとどまる。
指定避難所は学校の体育館や集会所、公民館が多い。診断が行われていないのは1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた施設が多く、耐震性が不十分とみられる施設も少なくない。学校の体育館は校舎の耐震化に合わせて対策が取られてきたが、公民館などは手つかずの施設が多いという。
那賀町の担当者は「体育館など収容能力が高い所から順次進めているが、合併により管理する施設が増えたこともあって、一気に行うのは財政的に難しい」と説明する。
人口減少を見据え、老朽化した集会所などの在り方を見直す中で、診断を見合わせている自治体もある。
鳴門市の担当者は「診断を行っていない施設には、存続するかどうか分からない施設もある。2020年度までに統廃合を視野に入れた検討を行い、対策を進めていく」と話す。吉野川市とつるぎ町も「人口減少の著しい地域では、将来的に廃止する施設が出てきてもやむを得ない」とする。
熊本地震では、熊本県内の指定避難所63施設が損壊するなどして、全部または一部が使用不能になった。指定外の避難所が開設されたり、被災者が車で寝泊まりしたりしたため、自治体は避難の全容を把握するのに手間取った。
徳島大環境防災研究センターの中野晋教授(地域防災学)は「行政が対策を急ぐのはもちろん、使えなくなる可能性のある避難所があれば、住民への周知を徹底すべきだ。住民側は避難所が使えなかった場合の代替施設を事前に把握するなど、備えを進めてほしい」と話す。