英国のヘンリー王子が王室を「離脱」することになった。メディアによる妻メーガン妃への過熱取材や報道がそもそもの原因とされる。

 母のダイアナ元妃は、パパラッチと呼ばれるカメラマンの車に追われて死亡した。12歳の心に刻まれた記憶と重ね、王子は「妻が同じ大きな力の犠牲になっている」と訴えていた。

 王室が取材対象になるのは立場上、当然のことである。しかし、プライバシー侵害や一方的な攻撃は「王族だから」で済まされない。

 衝撃を伝える報道では、メーガン妃の人柄や王室内の対立が強調されている。女王や兄嫁との確執話は一般の興味を引くが、確たる根拠はない。核心はむしろ、メディア自身にあるのではないか。

 皇室にも「王子の訴え」と共通する悩みがある。秋篠宮家の眞子さま結婚を巡る週刊誌報道など、当事者の心情に配慮しているとは思えない。

 とはいえ、英王室と皇室の違いは大きい。離脱騒ぎのきっかけは、王子夫妻による写真投稿アプリ「インスタグラム」での声明だった。皇室では想像もできない。

 王子は大衆紙を訴えてもいる。移住先とされるカナダでは、早くもパパラッチ相手に提訴の構えを見せた。皇室の場合、裁判に訴えるなど想定外だ。個別の報道を対象に、法廷が見解や基準を示す可能性はない。

 天皇や皇族が思いを表明する最後の手段として、誕生日や外国訪問時の記者会見や文書回答の機会があった。

 1993年、週刊誌による「皇后バッシング」の渦中で、上皇后さまが「事実でない報道がまかり通る社会になって欲しくありません」と反論。翌朝倒れ、失声症となった。

 2000年には、新聞社が報じた「雅子さま懐妊の兆候」に関し、皇太子時代の陛下が「個人のプライバシーの領域であるはず」と発言。佳子さまも昨年、姉の結婚報道に不信感を示した。

 しかし、結果として報道機関が脅迫されたり、発言自体に批判が集中したりと、好転に結び付いたとは言えない。解決の処方は見いだせず、今に至っている。

 英王室との違いは、もう一つある。王子の王位継承順位は6位。仮に資格を失っても大きな影響はない。皇位継承資格者が3人しかいない皇室の事情とは大きく異なる。

 その皇位継承問題に、メディア問題は影を落とす。現状のままでは、皇室に入る女性は、メーガン妃のようにカメラを「監視の目」と感じ、ストレスを重ねるだろう。それは、皇后さまの身にも起きたことだ。未来のお妃候補の心理にも影響するだろう。

 メディア側がプライバシーに配慮すべきなのはもちろんだが、多種多様な媒体の「統制」などあり得ない。重要なのは宮内庁の役割である。今回の問題を機に、各王室の広報体制を学び、皇室の悩みに応える方策を考えるべきだ。