1960年代、モータースポーツの最高峰ル・マン24時間耐久レースで、自動車会社同士の、今や伝説となっている戦いがあった。公開中の映画「フォードvsフェラーリ」はその裏側を描く。

 主人公はル・マンの元覇者でカーデザイナーのキャロル・シェルビーと英国人ドライバーのケン・マイルズ。癖のきついこの二人が、手を携えて世界に挑んだ。マイルズはこの時、40代半ば。競技者としては、既に盛りを過ぎていた。

 もう一度夢を追う、おっさんたちの物語と読み解くこともできる。スクリーンの前のおっさんも、がぜん二人に肩入れし、身を乗り出して見入ったのである。情熱と友情。必要な小道具は全て取りそろえられ、後は感動が待つのみ。

 圧巻はレースシーンだった。CGを使わず、実車で撮ったという。耳をつんざく排気音、クラッシュ、めまいがするほどのスピード感。手に汗握る場面の連続に酔いながら思った。この映画はガソリン車へのオマージュ、献辞ではないか。

 2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を多くの国が掲げ、企業も自動運転、電気自動車といった次世代技術の開発を加速させている。化石燃料を使って走る車は程なく消えゆく運命にある。

 そこまで来ている爆音のない未来。いいことではあるけれど、本音を言えば、少し寂しい。