2019年12月11日午後、徳島阿波おどり空港(松茂町)に香港からの旅客機が着陸した。空港ロビーに次々とスーツケースを引いた外国人旅行者らが姿を見せると、待ち構えていた徳島県職員らが横断幕を掲げ、歓迎した。

 この日、昨年度に続き2年目となる香港と徳島を結ぶ季節定期便の運航が始まった。3月28日まで週2往復で運航する。

 徳島市でホテルを経営する偕楽園観光の住友武秀社長(83)=市旅館組合理事長=は「国際線があるに越したことはない。人口が減る中で外国人旅行者は大事だ」と話し、こう続けた。

 「LCC(格安航空会社)が入ってほしい思いは以前からある。国内線で就航した高知では若い旅行者が増えたと聞く。一部を除き旅行にかける費用は抑えたいのが一般的だ」

 人口減少が進む地方にとって、外国人旅行者の増加などにより成長が続く観光は魅力的な分野となっている。そんな中、全国の自治体が競うように力を入れるのが、航空路線拡充や夜間観光プランの開発だ。四国4県も動きが活発だが、徳島は他の3県と比べて遅れているのが現状だ。

 例えば航空網。以前から徳島の航空路線は他県に比べ見劣りしていたが、四国の他空港と比べると、ここ1、2年で、差はむしろ拡大した。

 松山空港では昨年7月、国際定期便で3路線目の台北線が週2往復で就航。4月からは週4往復に増便する。高松空港の香港線は、19年度冬ダイヤが週4往復から5往復に増便した。高知龍馬空港では19年12月に神戸線が開設されたほか、18年12月からLCCが成田と関西の両空港間で就航した。

 徳島阿波おどり空港は、1日1往復だった福岡線が18年3月に2往復に増便されたが、通年運航の路線数は羽田と福岡の2路線のみ。松山の12路線、高松と高知の7路線と比べて少なく、LCCも唯一飛んでいない。

 夜間観光も徳島県は結果を出せていない。記憶に新しいのは18年2月に徳島市と共に8千万円ずつを負担して開いた「とくしまLED・デジタルアートフェスティバル」。県は宿泊増を見込んだものの、市内のホテルで効果を実感する声はほとんど聞かれず、次年度の開催は見送られた。

 県は19年度に民間事業者らが行う夜間イベントの経費の補助事業を始めた。しかし、周知不足もあり、補助金申請は5件にとどまり、新規事業1件、既存事業の拡充2件が選ばれた。同様の事業を行った香川県では11件が集まり、新規5件、拡充2件を採択。ここでも水をあけられた。

 県内の延べ宿泊者数は観光庁の宿泊旅行統計によると、18年まで4年連続全国最下位となっている。飯泉嘉門知事は18年3月の定例会見で観光戦略の課題について「県の情報発信やPRの下手さがある」と語った。今回の夜間イベント補助制度の低迷を見ても、まだ十分ではなさそうだ。

 今夏の東京五輪・パラリンピックや25年の大阪・関西万博などの波及効果を、徳島までどう呼び込むのか。徳島経済研究所の元木秀章上席研究員は「現状を見る限り、期待する効果は得られないかもしれない。行政や民間が一体となって情報発信や受け入れ体制の充実に取り組む必要がある」と語る。全国の中で取り残されている現状の打開へ、結果が求められている。

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 15年度に始まった国の地方創生は今春、2期目に入る。県や市町村は新しい戦略の策定を進めている。人口減少の中、持続可能な地方の姿は見えてきたのか。徳島の現状を探る。