JA全農とくしまは、神奈川県湘南生まれの水稲新品種「はるみ」の生産を2017年産から徳島県内で本格化させる。味が良く安定栽培が見込めるはるみを、品質が低下傾向のキヌヒカリに代わる主力品種に育て、米農家の所得向上につなげる。4月、はるみの名で流通させるのに必要な農林水産省の産地品種銘柄にも指定された。
はるみは、全農営農・技術センター(神奈川県平塚市)がコシヒカリとキヌヒカリを交配し、改良を重ねて14年に品種登録された。全農によると、両品種の特長の粘りと柔らかい食感を受け継ぎ、炊き上がりのつやと光沢が特に優れる。耐暑性を備え、収量は両品種と同等かやや多い。
徳島県産米はコシヒカリとキヌヒカリが主力品種。キヌヒカリはコシヒカリに次いで栽培面積が広いものの、近年1等米の比率が3割前後と低く、3等米や規格外も相当数発生し、農家所得低迷の一因となっている。
こうした状況を踏まえ、全農とくしまは品質面の改善が見込め、成熟期がキヌヒカリと同じはるみに注目。13年から県内で実証試験に取り組んだ結果、病害虫被害は見られず、収量はキヌヒカリを上回った。味も試験に参加した農家の6割以上から好評価を得た。
産地品種銘柄に設定されたことで、県内にあるJAなどの検査機関を経由すれば県内産も「はるみ」の名で出荷できる。全農とくしまは17年産で10ヘクタール、18年産で20ヘクタール、19年産で50ヘクタールの栽培を見込んでいる。
日本穀物検定協会の16年産米の食味ランキングでは、神奈川県産はるみが初めて最高評価の特Aを取得した。全農とくしまの担当者は「味が良くなければ産地間競争に勝てない。徳島県産のはるみでも特Aを取ることができれば」と話している。