我慢して我慢して、それでも流れる一筋の涙は美しい。人目はばからない号泣も、これもまた、なかなかいいものだ。大相撲初場所を制した徳勝龍。笑顔も泣き顔も似合う人である。

 幕内最下位の幕尻力士。見上げるほかない位置にあって14勝1敗。「下克上」と形容されたりもする。そのとげとげしい響きとは大違いで、至って温和な、皆に慕われる人らしい。

 「もう33歳、じゃなくてまだ33歳だと思って頑張る」。優勝インタビューでのこの言葉、ぜひメモしておきたい。33の代わりに、55を入れても、77を入れても成立する味わい深さがある。人生100年時代の今、99でも大丈夫だろう。

 「幕尻」に、親近感を覚えた読者も少なくなかったのでは、と想像する。当方の場合は、判官びいきというより、政府が何かの統計を発表するたびに、鳥取や島根、高知に対して持つ感情と近い。

 本県同様の下位常連組である。優勝を伝えたきのうの本紙朝刊1面にも、徳島県内の延べ宿泊者数が、2018年まで4年連続で全国最下位(観光庁の宿泊旅行統計)だったことに触れた記事があった。

 そもそも、魅力的な古里づくりに勝ち負けはないけれど、汗を流してこそ咲く花は土俵の外にだってある。しこ名は「徳」島が「勝」つ、「龍」のごとく。これは奇瑞、とまで言えば悪のりが過ぎるかな。