四国電力に原発事業者の資格はあるのか。そんな疑念すら抱かせる事態だ。

 伊方原発(愛媛県伊方町)で、ほぼ全ての電源が一時的に喪失するトラブルが起きた。非常用ディーゼル発電機が作動するなどし、事なきを得たものの、電源が長時間失われていたら、炉心溶融(メルトダウン)を起こした東京電力福島第1原発の二の舞になるところだった。

 伊方原発のトラブルは、今月に入って3度目だ。四電は定期点検中の3号機の作業を見合わせ、広島高裁の運転差し止め仮処分決定に対する不服申し立ても当面見送るとした。当然の対応である。原因究明と再発防止策の徹底なくして運転再開はあり得ない。

 今回の停電は、原発に電気を供給する送電線の部品の取り換え作業中に発生した。異常な電流が流れた場合に電気を遮断する装置が作動した。

 1、2号機は廃炉に向けて運転停止中で、1号機は使用済み核燃料を搬出済みだが、2号機は3号機と同様、プールで燃料が冷却保管されている。約10秒とはいえ、電源が失われたことは衝撃である。

 さらに問題なのは、唯一稼働する3号機にトラブルが相次いでいることだ。

 今月12日、制御棒1本が約7時間にわたり原子炉から引き抜かれた状態となった。原子炉格納容器の燃料固定装置上部をクレーンで引き上げようとした際、一緒につり上がった。

 プルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を全国で初めて原子炉から取り出す準備作業中で、細心の注意を払っていたはずだ。制御棒は核分裂反応を抑える装置であり、重大事故を招きかねなかった。

 20日には、使用済み核燃料プール内で、燃料の落下を示す信号が発信された。実際に落下はなく、クレーンで燃料を移動させていた際、燃料が点検装置に正しく挿入されなかったためとみられている。

 それだけではない。昨年も原子炉補助建屋でポンプを点検中、弁の操作ができなくなったり、この建屋の地下の放射線管理区域で、緊急時に冷却水を原子炉に供給するポンプから潤滑油が噴出したりする異常が起きている。

 ここまでトラブルが続くと、四電の安全に対する意識や体制に問題はないのか、との疑問が湧いてくる。

 原子力規制委員会の会合では、制御棒引き抜きについて「軽微とは思い難い。四電の捉え方、深刻度が軽すぎるのではないか」との声が出た。もっともな指摘である。

 四電の長井啓介社長は電源喪失トラブル後も、地震や火山リスクへの安全対策の甘さを挙げた広島高裁の仮処分決定に対し「問題があるという思いは今でも変わらない」と述べている。

 安全の上にも安全が求められるのが原発だ。苦言や注文にも耳を傾ける姿勢が必要なのではないか。