鳴門市大麻町で生まれたコウノトリのひな3羽のうち、雌の「あさ」(個体識別番号J0142)と雄の「蓮(れん)」(J0140)が2日午前、巣立ちした。巣を飛び立ち、近くの田んぼに降りた。野外で生まれたひなが巣立ったのは、国内で野生のコウノトリが絶滅した1971年以降、兵庫県豊岡市とその周辺以外では初めて。コウノトリの野外での個体数は、あさが94羽目、蓮が95羽目となった。
午前8時すぎ、あさが巣を離れ、上空を2分ほど飛行してから巣の西側の田んぼに降りた。その後、田んぼの生物をくちばしでついばみ、餌を捕るなど元気な姿を見せた。蓮は同9時23分ごろ、あさがいる西側の田んぼに向かって緩やかに滑空し、着地した。
雄の親鳥が田んぼにいるあさ、蓮に近づき、親子3羽がそろう場面もあった。残り1羽の雄のひな「なる」(J0141)は、同日正午時点で巣に残っている。
ひな3羽は「3月21日ごろ」に誕生したとみられ、5月4日ごろから巣の上で羽根を羽ばたかせ、垂直に飛び上がるなど、飛行の練習をしていた。あさは雄2羽に比べて飛び上がる高さや、滞空時間ともに伸びていた。
ひなは当初、4羽確認されていたが、3月30日に親が体が小さかったり弱ったりしているひなを死なせる「間引き行動」を取り、3羽となった。
兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(豊岡市)などによると、巣立ったひなは秋ごろまでは巣の周辺にとどまるとみられる。飛行能力は未熟で、電線に足を引っかけるなどしてけがをし、死んでしまうこともあるという。
県内の官民でつくるコウノトリ定着推進連絡協議会は、午前11時からJA徳島北板東支所で会見を開き、保護のため、巣から400メートル、ひなから150メートル離れて観察することを呼び掛けた。竹村昇会長(64)が「鳴門の地に降り立ってくれて感動した。これからも温かく見守ってほしい」と話した。