連合の神津里季生会長と経団連の中西宏明会長が会談し、2020年春闘が事実上始まった。

 春闘では昨年まで、6年連続で2%台の賃上げを達成したが、上昇率は2年続けて縮小している。

 日本経済がデフレから脱却し、成長軌道に乗るためには個人消費の拡大が欠かせない。着実な賃上げが持続できるかどうかが問われる。

 会談で、中西会長は「このところ続いているモメンタム(勢い)は大事だ」と述べ、労使ともに賃上げの必要性では一致した。

 ただ、経営側には慎重な姿勢もうかがえる。経団連は先週発表した経営労働政策特別委員会(経労委)報告で、賃上げは「前向きな検討が基本」としつつ、基本給を引き上げるベースアップ(ベア)については「選択肢となり得る」と、昨年の「選択肢となる」から後退させた。

 米中貿易摩擦などで、景気の減速感が漂っていることが背景にあるのだろう。

 だが、企業の内部留保は安倍政権による企業減税の恩恵もあり、18年度に463兆円超と過去最高を更新した。一方で、収益を人件費に回した割合を指す労働分配率は低下傾向にあり、実質賃金も低迷したままだ。

 昨年10月の消費税増税で国民の負担は増している。景気を下支えするためにも、経営側は蓄えた収益を働く人にしっかりと還元すべきである。

 連合は今春闘方針で、賃上げと合わせて、企業規模や雇用形態による賃金、待遇の格差是正を要求の柱に掲げた。

 各企業が企業内最低賃金を独自に設定し、中小や非正規の労働者の賃金底上げを図ろうというもので、「時給1100円以上」との具体的な目標も初めて明示した。

 4月からは、非正規と正社員の不合理な格差をなくす「同一労働同一賃金」が大企業に導入される。働く人の4割近くに上る非正規の待遇改善は、待ったなしの課題だ。

 連合が示した時給1100円は地方の最低賃金と開きがあり、現実的ではないとの意見もある。これを一つの案として労使で議論を重ねてもらいたい。

 経団連が提起した日本型雇用の見直しも焦点となる。新卒一括採用や終身雇用、年功序列賃金などの慣行は、人工知能(AI)をはじめ、経済のデジタル化や国際化といった急速な環境変化に対応できなくなっているとの主張だ。

 必要な技術を持つ即戦力を国内外から採用するには、雇用や賃金体系の改革が不可欠との認識は理解できる。

 しかし、終身雇用の見直しや人材の流動化は、安易なリストラにもつながりかねない。働く環境の悪化や格差拡大を招くようなことになれば、国際競争力も弱まろう。

 長年続く雇用慣行の見直しは、社会に大きな影響を与える。性急に進めず、労使双方にメリットがある形を探らなければならない。