伝染病の原因となる病原性細菌が次々と突き止められた19世紀、いくら探してもそうした細菌が見当たらない病気があった。どうやら、ろ過器を通過する小さな細菌があるようだ、と分かったのが、その世紀も末。

 ラテン語で「毒素」を意味する「ウイルス」と名付けられた。後に、細菌とは全く違う性質が明らかになる。何かに寄生しないと生きていけず、自己増殖もできない。違いは、大きさだけではなかった。

 細菌には抗生物質が効く。しかし、生物でも無生物でもないこの厄介な病原体には、ワクチンなどを除き、特効薬がない。2003年には重症急性呼吸器症候群(SARS)、今度は新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている。

 感染者が急増している中国からきのう、チャーター機で邦人200人余りが帰国した。残る人々の「救出」を急ぐとともに、マスク不足などが伝えられる現地の支援にも力を注ぎたい。情けは人のためならず、という言葉もある。

 非常識なことに、不安の高まりに乗じて毒素をばらまく連中がいる。既にネットには「発熱などの症状が出ている中国人が関西空港で逃走した」といったデマが流れている。

 国内でも感染者が見つかった。過剰反応が一番いけない。情けない連中を喜ばせるだけである。新型肺炎をやり過ごすには、冷静な対応こそ大事だ。