英国はあす、前身の欧州共同体(EC)の時代から47年間加盟してきた欧州連合(EU)とたもとを分かつ。

 昨年10月に合意した離脱協定案により、年内いっぱいは社会や経済の激変を緩和する「移行期間」に入る。加盟国としての恩恵がほぼ維持されるため、直ちに大きな影響を及ぼすことはなさそうだ。

 とはいえ、今後の英EUの関係や、それぞれの将来の姿がどうなるかは不透明で、懸念材料は少なくない。

 2021年の完全離脱へ、市民生活や企業活動が混乱に陥らないよう、双方に最大限の努力を望みたい。

 離脱の背景には、04年に所得水準の低い東欧諸国が加盟し、英国に移民労働者が大量に流入したことがある。国内の雇用情勢が年々悪化し、離脱を求める声が高まったことから16年6月に国民投票を実施、離脱が決まった。

 離脱実現まで3年7カ月を要したのは、EUとの離脱条件を巡る交渉が難航したことや、議会の対立が原因だ。離脱を前にジョンソン首相は「長い議論と分断が終わる」と強調し、「ようやく前に進むことができる」と語った。

 問題は、移行期間中に通商や漁業権、安全保障などさまざま分野でEUと新たなルールを決めなければならないことだ。交渉内容は極めて複雑で、通常なら数年かかるとみられている。

 移行期間については6月末までに双方が同意すれば、最長で22年末まで延長できることになっているが、ジョンソン氏は延長しない方針だ。

 ただ、期間内に交渉がまとまらなければ「合意なき離脱」が現実味を帯び、社会・経済が混乱しかねない。ジョンソン氏には的確な状況判断が求められる。

 加盟国の脱退は初めてとなるEUにとっても、大きな痛手だ。

 国連安全保障理事会の常任理事国・核保有国で、世界有数の国内総生産(GDP)を誇る大国が抜けることで、国際社会での地位や発言力の低下が危惧される。

 たちまち、影響するのはEU予算だ。英国は18年に約135億ユーロ(約1兆6500億円)を拠出している。これはEU予算全体の10%近い。英国分の歳入減少で、加盟国の負担が増えれば反発が強まり意見集約が難しくなろう。

 一時は「EU崩壊か」との声もあったが、今のところ、英国に追従するような目立った動きは見られないという。それでも、欧州には排他的なポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっており、再び離脱論に火がつく恐れもある。

 英国は16年以来、首相が2人辞任するなど内政が混乱し、地域間や世代間の分断も進んでいる。EUも、加盟国が一枚岩とはいえず、今後、進行中の政策や新たな計画の開始が危ぶまれる事態も想定される。

 互いの発展に向けどのような関係を築くのか。双方ともこの1年が正念場となる。