小さなあずまやを通勤途中に見掛けた。徳島市庄町を走る国道の歩道に接した1坪(3・3平方メートル)ほどに立つ。切り妻屋根の下に2、3人掛けのベンチが1脚。どう考えても企業の敷地内にある。勝手に座っていいものか、どうか。

 皆さんに利用してもらうスペースですから、どうぞ―。拍子抜けするほどあっさり勧めてくれたのは当の企業、喜多機械産業の担当者。「防災ベンチ」で、災害時には炊き出し用のかまどとしても使えるそうだ。

 2年前の本社建て替えに合わせ、災害時に地域住民の役に立つ場所を造ることにした。いざ設営すれば、目の前にある横断歩道の信号待ちにも、日差しを避ける休憩にもよし。来客駐車場の用地1台分をつぶしても整備する価値はあった、と社長は言う。

 企業の社会貢献といえば、ひと昔前はもっぱら製品やサービスの提供、納税、雇用が主だった。今やCSRと称され、環境保護や地域奉仕の取り組みが脚光を浴びる。

 近ごろ会社にはやるもの、不正販売、データの改ざん・・・。中世の頃なら落書で風刺されかねないほど、近年は企業の不祥事が絶えない。そんな状況だから、ささやかな試みとはいえ「身」を削っての心遣いにうれしくなる。

 <時計見てベンチを立てり冬の人>阿部みどり女。1坪のあずまやが、どれだけの人々に憩いを与えるだろう。