阿波市の介護老人保健施設「しょうか苑」で先月、肺炎や呼吸器不全によって80~100歳代の入所者5人が亡くなったことが判明した。この施設では「ヒトメタニューモウイルス」の感染症が集団発生しており、死亡はこのウイルスが原因の可能性があるという。

 痛ましい事案である。ウイルス感染が拡大したのはなぜか、保健所と施設は、原因を一刻も早く突き止めることが求められる。

 県によると先月6日以降、施設では入所者78人のうち36人がせきや発熱などを訴え、検査の結果17人からウイルスが検出された。

 ヒトメタニューモウイルスは、患者のせきやくしゃみで飛沫感染するケースが多い。乳幼児や高齢者が感染すると気管支炎や肺炎などの合併症を引き起こし、重篤化することがある。

 先月末の時点で入院・治療中の計31人は回復傾向にあるという。新たな感染者は出ていないようだが、施設はこれ以上感染が拡大しないよう万策を尽くす責任がある。

 施設職員の一人は取材に「普段からマスクや手洗いをしっかり行っていた」と感染症予防に努めていたと説明しているが、死者が発生したという事実を厳しく受け止める必要があろう。

 運営法人の理事長は、これまでに入所者や面会者、施設職員らから聞き取りをしたものの、感染源は特定できなかったと話している。感染経路の解明は、なお粘り強く続けてもらいたい。

 施設の一連の対応を、詳しく点検することも欠かせない。施設が保健所に報告したのは、最初の発症者が出てから16日後、計5人の死亡が確認された日だった。

 厚生労働省が公表している「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」では、同一と疑われる感染症が10人以上か全利用者の半数以上に発生した場合など、施設が自治体の担当部局や保健所に報告する条件を定めている。

 今回、報告はマニュアルに沿って適切になされたか。救える命はなかったか。予断なく検証し、今後に生かさなければならない。

 保健所の助言を受けて施設が行ったウイルス検査についても、果たして結果判明までに5日間も必要だったのか。保健所と施設はうまく連携できていたのかを、見極める必要がある。

 ヒトメタニューモウイルスは聞き慣れないウイルスだが、全国で集団感染の事例が相次いでいる。4年前には東京都内の高齢者施設で31人が感染、このうち3人が死亡している。決して侮れない感染症だ。

 2~6月は流行期に当たるという。他の高齢者施設で起きていないか、改めて入所者に目を配ってほしい。施設運営者はさらに、感染対策マニュアルを読み直し、日頃の衛生管理と発生時の迅速な対応を確認しておくべきである。