徳島県沿岸の広い範囲で3月下旬からまひ性貝毒発生の原因となるプランクトンが大量に検出される事態が続き、漁業などへの被害拡大が懸念されている。県が二枚貝の出荷自主規制を指導したのは鳴門市のウチノ海を除く沿岸全域に及び、記録の残る2003年以降で初めての異常事態となったほか、県南では赤潮となり、魚が死ぬなどした。牟岐町沖では6日までにプランクトンの減少が確認されたものの、増殖の原因は究明できておらず、このまま収束するかどうか見通せない状況だ。
県水産振興課によると、県内沿岸で検出されているのは、貝毒の原因となる植物プランクトン「アレキサンドリウム・タマレンセ」。県内沿岸部のほぼ全域で、貝毒検査を行う基準(海水1ミリリットル中5個)を上回った。
赤潮が発生した牟岐町沖では1日に基準値の120~320倍となる600~1600個が検出されたほか、徳島市沖でも2日に330個が確認された。牟岐沖では5日に1ミリリットル中37個まで減ったが、依然として高い水準にある。
県は赤潮による漁業被害を懸念。魚は餌を食べる際に多くの酸素を必要とすることから、県内の漁協に対し、養殖場の魚が酸欠に陥らないよう餌やりの中止を1日に要請。天然の魚介についても、海水の入る船底のいけすでは衰弱する可能性があるとして、速やかな出荷を促している。
プランクトン増殖の要因として考えられるのが海水温。県内沿岸は年明けから平年値を下回っていたが、3月に入り急上昇。県南では平年を2度ほど上回る日もあった。ただ、因果関係は特定されていない。
海陽町の浅川漁協組合員で、毎年約2万匹の養殖カンパチを育てている藤本和宏さん(46)=同町浅川=は「餌止めが続くと魚の成長が遅れる。早くプランクトンが減少し、規制が解除されてほしい」と頭を抱えている。
県は引き続き警戒が必要だとして、7日に沿岸部の市町職員や漁業関係者らを集めて情報連絡会議を開き、二枚貝の出荷自主規制や潮干狩りの自粛の徹底を呼び掛ける。