5日死去したアニメーション監督の高畑勲さんは、阿波の狸合戦に想を得た長編アニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」(1994年)を発表しており、作中には小松島市の「金長だぬき」が登場する。94年6月には、ヒット祈願を兼ねて来県。昼食会場となった地蔵寺(同市松島町)の服部宏昭住職(63)は「物静かだが、知的好奇心が旺盛な方だった。金長だぬきは雄々しく立派な役を与えてもらい、タヌキと人間が共生する理想郷として描かれていた」と話す。
作中にも登場し、高畑さんがヒットを祈願した金長大明神(通称・金長神社)は現在、取り壊しが計画されており、住民団体「金長神社を守る会」が存続を求めている。会員でもある服部住職は「精神的な後ろ盾を失ったようで非常に悲しい。天国から見守ってもらえたら」と悼んだ。
高畑さんは92年10月には貞光町(現つるぎ町)の貞光劇場で開かれた「高畑勲映画祭」に招かれた。主催した貞光ふるさと探偵団団長の阿佐哲也さん(61)=同町貞光町、自営業=は映画祭の夜に酒を酌み交わし、自分たちの話に目を細めて耳を傾けてくれたことが忘れられないという。
「ジャンプのシーンでの動きなどを聞かせてもらい、こだわりが感じられた。夢のような時間だった。田舎だと軽んじることなく、町おこしに協力してくれた。優しい人でした」と話した。