北井上西部土地改良区の関連団体・北井上西部環境保全協会(徳島市国府町西黒田)の貯金口座から5回にわたって計670万円を着服したとして、業務上横領の罪に問われた改良区前理事長の鎌田穗積(ほずむ)被告(72)=同市国府町西黒田、無職=の初公判が8日、徳島地裁(佐藤洋介裁判官)であった。鎌田被告の弁護人は、被告の訴訟能力に疑問があるとして罪状認否を留保した。
罪状認否で鎌田被告は最初に「間違っていない」と答えたが、裁判官が再度、5回の着服について一つ一つ確認すると、1回を認め、3回は否認、1回は「あるかもしれない」と答えた。これを受けて弁護人は、鎌田被告が起訴内容を理解しているかどうか疑問があると判断し、認否を留保した。
鎌田被告は車いすで入廷。冒頭の人定質問でも、住所を途中までしか言えなかったり、裁判官の質問に反応しなかったりする場面があった。
公判終了後、裁判官と検察官、弁護人で裁判の進行について協議。29日に次回公判を開き、鎌田被告の罪状認否を再度行うことになった。
弁護人は協議終了後の取材に「認知症の可能性もある。次回公判でも同じような状況なら、被告の訴訟能力について医師の意見を求めるなど、裁判所が何らかの判断をするかもしれない」と話した。
起訴状によると、鎌田被告は2015年4月と同11月、環境保全協会代表として管理していた協会の二つの貯金口座から計670万円を着服したとしている。
鎌田被告は、改良区のポンプ場修繕工事の発注で便宜を図り、受注業者から現金200万円などの賄賂を受け取ったとする土地改良法違反(収賄)の罪でも起訴されている。