少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げる少年法改正案について、政府が今国会への提出を見送る方針を固めた。

 2017年2月に法制審議会(法相の諮問機関)に諮問されたが、少年の更生に悪影響が生じるなどの異論があり、意見集約のめどが立っていないためだ。与党の公明党の反対も根強い。見送りは当然である。

 改正に固執するのではなく、保護、更生を図る少年法の立法趣旨に沿った議論を求めたい。

 適用年齢の引き下げの動きは、選挙権年齢や成人年齢を18歳にする法改正に連動して浮上した。15年には自民党が改正を提言し、法制審でも「18歳成人」と一致させるべきだとの意見が出ている。

 これに対して、改正は不要で弊害が多いと反発しているのが、日弁連や元少年院院長有志らだ。

 現行法では、14歳以上の少年が罪を犯した場合、全ての事件が検察官から家庭裁判所に送致される。家裁は少年の家庭環境などを調査し、審判で保護観察や少年院送致、検察官への送致(逆送)などの処分を決めている。

 適用年齢を引き下げれば、18、19歳の少年は家裁調査官による教育的措置や、少年院でのきめ細かな指導を受けられなくなるというわけだ。

 そうした批判に配慮し、法務省は昨年、引き下げに合わせた2案を法制審に示した。

 裁判員裁判の対象になるような事件は成人と同様、検察官が起訴を判断し、それ以外は家裁に送致する案と、全ての事件を家裁に送るものの、検察官に逆送する対象の拡大を検討するという案だ。

 だが現行法には、16歳以上の少年が故意に被害者を死亡させた場合、家裁は原則として検察官に逆送するとの規定もある。

 法務省の二つの案は、現行の制度とほとんど変わらないように見える。これでは、改正の必要性がないと言われても仕方あるまい。

 犯罪白書によると、10歳以上の少年10万人当たりの刑法犯検挙人数は、1989年の1057人から昨年は269人と4分の1に激減した。少年法の厳罰化が進み、非行抑止に機能していることが要因の一つだろう。

 元少年院院長らの有志は声明で、非行少年は虐待など成育環境が厳しい場合が多く、年齢引き下げは最後の成長発達の機会を奪い、将来に大きな禍根を残すと訴えている。

 元家裁調査官らの有志も「更生にとっても、再犯を防止して安全な社会をつくる上でも、百害あって一利なし」との声明を出した。

 飲酒や喫煙などは、健康への懸念から現行の20歳未満禁止を維持している。成人年齢に一律に合わせるといった「引き下げありき」の姿勢は疑問だ。

 少年の更生に関わる重要な制度であり、慎重な判断が求められる。