那賀町出身の藤田恭嗣氏が社長を務める電子書籍取次大手・メディアドゥホールディングス(HD、東京)は6日、徳島新聞社など県内4社と共同で、起業支援に取り組む一般社団法人「徳島イノベーションベース(TIB)」を設立したと発表した。4月1日、徳島市のアミコビルに拠点を開設。起業家をはじめ、起業を目指す学生、社会人らが勉強や打ち合わせに使えるコワーキングスペースとし、全国の起業家の講演やワークショップを定期的に行う。
TIBは5社が計5千万円の資金を拠出し1月29日付で設立した。参画企業と議決権比率は、メディアドゥHD60%、徳島新聞社20%、四国放送10%、阿波銀行と徳島大正銀行が各5%。藤田社長が代表理事を務める。
拠点とするのは、そごう徳島店が8月末で閉店するアミコビル9階の一角約280平方メートル。徳島市が市立木工会館に代えて設ける「市産業支援交流センター」に隣接する。ビル内に市立図書館があり学生の出入りが多いことや、徳島駅前という立地条件などから決めた。
事業計画では、コワーキングスペース(60席程度)提供のほか、「起業家が起業家を生み育てる」をコンセプトに、若手起業家でつくる世界的な組織「EO」と連携。藤田社長が会長を務める「EO Tokyo」をはじめ、国内8支部(約600人)のメンバーらの講演やワークショップを毎月開き、先駆的な経験や知識を伝えてもらう。
参加者同士のつながりを橋渡しできる人材を配置する予定で、同じ課題を持つ人が集まり、悩みを相談したり解決手法を見つけたりしながら成長し合う機会も設ける。
5社がそれぞれの強みやネットワークを生かして、他の企業や団体、県内の大学などとの連携も深め、大学の起業カリキュラム構築を支援したり、インターンシップを仲介したりもする。
29日に徳島市のJRホテルクレメント徳島で、起業支援に興味のある企業や団体、起業を目指している人らに向け、事業方針などの説明会を開く。
地方では、若者や企業の都市圏への流出が課題となっている。メディアドゥHDは、人材が育つ環境を整えることが課題解決につながると考え、同じ意識を持つ県内4社に協力を呼び掛けた。そごう撤退後の徳島駅前のにぎわい創出への期待もかかる。
藤田社長は「経営者がより成長するためには経営者同士のネットワークを築き、互いに高め合い、時には助け合えるセーフティーネットをつくる必要がある。情報や知識に加え、先輩起業家の助言も得られる場を提供し続け、古里に恩返しがしたい」と話している。