診察、調剤など医療サービスの対価として医療機関や薬局が受け取る診療報酬について、厚生労働省が2020年度の改定内容を決めた。

 長時間勤務が慢性化する救急病院の働き方改革推進に向け、患者の受け入れ実績が高い病院への報酬を手厚くするのが柱である。

 医療の質を維持するためにも、勤務医の負担軽減は喫緊の課題だ。ただ、報酬の上乗せは国民の負担増につながる。医療機関が改善に真剣に取り組むのはもちろん、厚労省は効果を検証し、結果を国民に説明する必要がある。

 診療報酬は2年に1度見直している。政府は昨年末、医師の人件費など「本体部分」を0・55%引き上げる一方、医薬品などの「薬価部分」を1・01%下げ、全体でマイナス0・46%とする大枠を決めた。これを踏まえ、中央社会保険医療協議会が個別の内容を検討していた。

 勤務医の働き方改革では、救急搬送が年2千件以上あり、地域の救急医療を担っている病院の入院料に5200円を加算する。電子カルテの入力など、医師の事務作業の補助職員を配置した場合の加算制度も拡充する。増額分で職員を増やし、医師や看護師の負担を減らす狙いだ。

 背景には、24年度から勤務医も残業時間の上限規制の対象となることがある。

 厚労省研究班の調査では、救命救急機能がある病院のうち84%に、残業規制の上限となる年1860時間を超えるとみられる医師がいた。

 長時間勤務は医師を疲弊させ、医療事故の危険性を高める。職員増や業務分担を着実に進め、過重労働の是正につなげることが重要である。

 気になるのは、改善に向けた計画の作成や責任者の配置を加算の条件としたことだ。これでは形だけの取り組みになりかねない。病院個々の状況を点検する仕組みを作り、実効性を高めるべきである。

 改定では、紹介状なしで大病院を受診した場合に追加料金を徴収する制度も拡大した。対象を400床以上から200床以上とする。

 軽症患者は身近な診療所が担当し、大病院は専門的な医療を担う。そうした役割分担を一層進めることが大切だ。かかりつけ医を増やすなど、地域の医療環境の充実も欠かせない。

 高齢化の進展により、医療費は増加の一途をたどっている。だが今回、安価なジェネリック医薬品(後発薬)に切り替えるよう促す仕組み作りなど、医療費抑制に向けた対策強化は見送られた。

 全体の改定率はマイナスとしたが、本体部分の引き上げは7回連続だ。その結果、民間病院の院長の平均年収は18年度で約3042万円、一般診療所の院長は約2807万円と高止まりしている。

 診療報酬の原資は国民が払う税金と保険料、窓口負担だ。医療の質を高めつつ、国民の負担を抑える工夫をしなければならない。