新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が止まらず、中国国内だけでなく、日本を含む世界の経済に影響が出ている。徳島県内でも観光面に暗い影を落とし始めた。

 政府や自治体は、経済への打撃を最小限に抑えるため機動的に対処してほしい。

 経済的打撃は、重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国で大流行した2002~03年を上回る恐れがある。当時、中国の国内総生産(GDP)の世界シェアは4%程度だった。それが16%を占める世界第2位の経済大国になった今、中国経済が落ち込んだ場合の影響はSARSの時の比ではない。

 中国の中央銀行は公開市場操作で1兆7千億元(約27兆円)を金融市場に供給したが、不安を抑えるには至っていない。1~3月期のGDP成長率が5%を割り込み、記録的な低さとなる可能性も指摘されている。中国の景気減速への備えを徹底する必要がある。

 19年の訪日外国人客のうち中国人は959万人と最多で、中国との貿易額が最も大きい日本への影響はひときわ深刻だ。

 観光業界は既に直撃を受けている。日本と中国を結ぶ定期旅客便数は、新型肺炎拡大前の計画と比べ、約6割減少した。大阪府内の宿泊施設では1月24日~3月1日の予約の2~3割でキャンセルが出ているという。

 大手百貨店4社の春節期間中の訪日外国人客による免税売上高はいずれも減少し、うち3社は前年を10~15%下回った。中国人に人気の高い薬や化粧品などの関連企業にもダメージが広がりつつある。

 本県も香港との航空便を昨年12月11日から季節運航しているが、旅行各社が中国や香港へのツアー販売を自粛しており、見通しは暗い。

 安倍晋三首相は衆院予算委員会で「観光を含めた地域経済などにも大きな影響をもたらし始めている」と述べ、万全の対応を取る考えを表明した。中小観光業への資金繰りの支援や風評被害防止に乗り出す方針だ。目配りを怠らず、きめ細かい対策を打ち出さなければならない。

 中国に進出している日本の製造業にも暗雲が垂れ込めている。

 きのう休業期間が明け、武漢市のある湖北省を除き、経済活動が再開したものの、多くの工場で生産が完全に戻るには時間を要するとみられる。トヨタ自動車は操業再開を17日以降とするなど、見送った企業もある。武漢市のホンダや日産自動車の工場は再開のめどが立たない状況だ。

 懸念されていたサプライチェーン(部品の調達・供給網)の寸断も表面化してきた。中国から部品が入りにくくなり、日産自動車九州の工場は稼働を一時停止する。

 代替生産や調達ルート変更を検討するメーカーも出てきた。企業にも、新型肺炎の長期化を見据えた危機対応を求めておきたい。

 <2020・2・11>