春一番が吹いた。昨年より1週間早い。全国に先駆けて、だそうである。何でもないことのようであっても、ほのかにうれしい。遠からじ、と待ち望んでいた便りである。

 この気象現象の定義、実は所によって微妙に異なる。高松地方気象台によると、四国ではー立春から春分までの間、低気圧が日本海付近にあって発達し、南寄りのやや強い風(おおむね最大風速10メートル以上)が吹く。最高気温が前日より高くなるーといった条件を満たすかどうかを基本に判断するそうだ。

 徳島市では13日、10・1メートルの南南東の風を観測した。気温も17度まで上昇している。すっと横顔を見せた春。再び寒くなり、二番が吹き、また寒くなり、三番が吹く。冬枯れで色を失っていた野山が、パステルカラーに覆われる日も近い。

 頃は幕末、場所は長崎・五島列島沖。早春の激しい南風にあおられ、壱岐の漁船7隻が沈没した。50人以上の漁師が亡くなったという。「春一番」は二度と悲劇が繰り返されないよう、教訓を伝えるために生まれた言葉らしい。

 春と付きながらもこの風、元をたどれば悲しみの色が染みこんでいる。そうでなくとも、春はまた、出会いと別れ、区切りの季節でもある。

 「はるかぜ」でもいいけれど、ここは勢いよく「しゅんぷう」といきたい。<春風や闘志いだきて丘に立つ>高浜虚子。