陽気に誘われて甘い香りを周囲に漂わせていた梅並木=吉野川市川島町

 「馥郁(ふくいく)」とは広辞苑で「良い香りの漂うさま」。梅の香りにぴったりの言葉だろう。吹く風に乗って届く甘い香りに誘われるように、梅並木の前に導かれた。

 吉野川市川島町で麻名用水がJR徳島線の下をくぐる場所にその並木はある。レンガ積みで造られた用水のトンネルも気になるところながら、きれいに剪定(せんてい)された梅が今を盛りとばかりに花を咲かせていた。

 こぢんまりとしているものの、香りは強い。目の前をメジロが行き交い、通りすがりの人も香りを楽しむかのようにゆっくり歩いている。

 春を告げる梅の花は、古くから日本人に愛されてきた。もともとは7~8世紀に中国から伝わったとされ、白や紅の花に加え、その香りが好まれたようだ。

 かつて花見といえば梅の花を楽しむこととされ、現在のように桜が主流になったのは江戸時代以降だそうだ。万葉集などで梅を題材にした歌が多いのはそうした背景がある。

 現在の元号「令和」も、万葉集の「梅花の歌三十二首」の序文を出典としている。太宰府の「梅花の宴」で詠まれた歌だったかな、などと思いながら、ぽかぽか陽気とかぐわしい香りに包まれて列車が来るのを待って撮影した。