性暴力救援センター・大阪SACHICOの加藤治子代表

 ―「性暴力救援センター・大阪SACHICO」を利用する人はどんな被害を受けているのか。

 8~9割は他人からのレイプだ。性虐待も多く2017年度が73人、18年度は89人。ここ数年は不特定多数からの被害が増えている。家庭での性虐待や暴力で居場所がなくなった中学生らが家出し、会員制交流サイト(SNS)で知り合った男性の被害に遭う。相手は体目当てなのに「優しいまなざし」を求め、繰り返し被害を受ける人もいる。

 ―多くの人は、被害の実態を言い出しにくいのではないか。

 知人、特に親しい間柄での被害が多いためだ。関係性がある中で起きるため「自分も悪かったのではないか」と思ってしまう。実際、夫婦や恋人の関係なら、強制性があってもほとんど犯罪と認められない。そういう現実があるから言い出せない。上司と部下、教師と生徒など被害者が「NO」と言えない力関係も多い。

 ―回復に向けて、どんな支援が必要か。

 被害後のケアが重要だ。特に幼少期の被害は体を触られた感覚などが残り、成長後に性的行為ができなくなる人もいる。医師が「どうにもなっていない。心配いらない」と伝え、安心してもらう必要がある。「汚れてしまった」と感じる人もおり、「あなたが望んだのではないし、何も失われていない」と説明するのも大切だ。

 ―性犯罪の無罪判決が相次いでいる。司法の改善点はあるか。

 明らかな暴行・脅迫がなくても、加害者からの支配的な関係性など、被害者にとって脅迫的な状況があるという認識を検察官や裁判官に持ってほしい。性的同意年齢(法的に性行為の同意能力があるとされる下限)が13歳というのも低過ぎる。同意には性行為や性感染症、対等な関係性についての知識が不可欠だ。それなのに、性教育が不十分で何も教えられていない。「この人とセックスしても大丈夫か」と判断するのは非常に難しく、15、16歳くらいに引き上げるべきだ。

 ―被害者を支援するために産婦人科医が担う役割は。

 子どもは通常、性器の内診を嫌がる。しかし、性虐待を受けた子は触られるのに慣れており平気だ。診察時の反応や態度で被害の有無を確認できる。性虐待は物的証拠がほとんどなく、本人の証言も十分得られないことが多い。産婦人科医がトレーニングを重ねて所見を出せるようになれば、不起訴や無罪になるケースが減るのではないだろうか。 

 連載の第1、2部では性暴力の本質や加害者の実像を探った。第3部は、被害者支援や再犯防止に取り組む専門家らに、性暴力が起きる背景や社会的構造を聞く。

 かとう・はるこ 大阪市立大医学部卒。1975年から阪南中央病院(大阪府松原市)で産婦人科医として勤務。未婚の10代やDV被害に遭った妊産婦の支援に取り組む。2010年4月、全国初のワンストップ型支援センター「性暴力救援センター・大阪SACHICO」を設立、代表を務める。