般若心経262字。あれ、278字でなかったか、と思われた方、三好市の箸蔵寺が頭をよぎりませんでしたか? 寺の本坊から本殿までの石段、一段一段に、般若心経を一文字ずつ石板に記し貼り付けてある。その数278段。

 一字一字唱えていけば、本殿に至るまでに、日本で一番知られたお経と言われる般若心経が読み終えられる寸法である。それなのに262字とはなぜか。結論からいえばいずれも正しい。理由は明快だ。

 最初の部分「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」は表題。全部で12字。最後に唱える「般若心経」が4字。これで数は合う。262は本文の字数なのである。

 それで、と聞かれても困る。先日、石段を見に・・・もとい、参拝して、ふと浮かんだ疑問を調べてみたら、ということである。それにしても、なかなかすがすがしい。一字一字追い掛けていると、階段のきついのを忘れた。

 法事以外で初めて唱えた不心得者ではあるけれど、本紙で読んだ佐藤盛仁住職のコメントが記憶に引っ掛かっていた。寺史をひもとくと、お経の字数から階段の段数が決まったわけではなさそうだ。

 「むしろ偶然の方が不思議な縁が感じられる」。不思議な縁か、縁の不思議か。色即是空。空即是色。深遠な仏教哲学が、何かの拍子でふわっと身近なものになる。寺とはそうした空間なのだろう。