ステキなタイミング―。新天地、米大リーグでも投打の「二刀流」でファンを沸かせる大谷翔平選手の姿に、かつて流行した歌が浮かんだ。坂本九さんが歌った「ステキなタイミング」だ
西池冬扇さん(73)=「ひまわり俳句会」主宰=の新著「時空の座拾遺(しゅうい)」(ウエップ刊)に、歌にまつわる本の思い出話が入っている。「少年行進曲」。<苦境でも、がんばれば運が切り開かれるという作者のメッセージ>が込められている
大阪で生まれて父が亡くなり、東京の親戚宅に預けられた西池さん。励ます思いだったのか、母が持たせたという
上京し札付きの不良「ブンチャン」と知り合う。彼がおやじの後を継いで表具屋になるのが夢だと言うのに感激して、この本を貸す。以来、手元を離れるが、ある日戻ってきた
それは、ぐれん隊のけんかに巻き込まれ亡くなったブンチャンの通夜。表紙の裏には「この世で一番かんじんなのはすてきなたいみんぐ」と鉛筆書きされていた。忘れられない傷のようだという
新年度に入り1週間余り。幸先良くホームランを打てる人はまれ。高揚感は薄れ、思い描いたようにいかないこともあるだろう。けれど「いずれホームランを打つ、そのタイミングをつかむ準備期間だとも思えば」と西池さんは言う。人それぞれ、グッドタイミングはやって来る。